十二月に入ると、それまで静かだった街は一斉に煌めきが灯る。木々や家がイルミネーションで飾られ、世間はもうクリスマスムード一色だ。
この小さなスーパーも例外ではない。入り口のすぐ横には、クリスマスケーキご予約受付中という大きな文字と、たくさんの苺と可愛いサンタが乗ったケーキの写真が載ったポスターが目立つように貼られていた。
「もうすぐクリスマスですね!」
隣で歩くドッピオ君が嬉しそうに言った。
「そうだね。それにしても、一年あっという間だなぁ。前回のクリスマスが先月くらいに感じる」
「充実してる証拠ですよ!」
少し早く仕事が終わった今日。心を弾ませながら帰宅している途中で偶然ドッピオ君に遭遇した。聞けばこれから買い物らしい。先に帰るわけにもいかず、私もついて行くことにした。
カートとかごを取り、まず向かった先は野菜コーナー。本日のお買い得商品と目立つポップが書かれた白菜を見つけたドッピオ君は、すかさず掴みかごに入れた。
「夕飯のメニューは決まってるの?」
「寒くなってきたから鍋にするって、吉良さんが言ってました!」
「いいね鍋。あったまるし野菜も摂れるし。あー、想像したらお腹空いてきた」
「鍋は嬉しいんですけど、お肉の取り合いになるのが怖いです……ボスも強いですけど、DIOさんやカーズさんも強いですし」と、ドッピオ君が零した。
ディアボロさんがいくら死にまくりの迷惑かけまくりの引きニートとはいえ、ボスである彼を想い、悲しい顔でしゅんと項垂れるドッピオ君を見るとこちらも胸が痛む。
「じゃあさ、こうするのはどう?先にドッピオ君とディアボロさんの分をわけておくの。お鍋には入れないでおいて、食べる時になったら自分のお皿だけに入れる」
「それなら僕もボスも食べれます!でも、いいんですか?」
「いいんだよ。ていうか、そもそもDIOさんとカーズさんって食べなくて平気なはずだし」
適当に「究極生命体ステキ!」とか「吸血鬼カッコイイ!」とか褒めておけば大丈夫でしょ、と私が言うとドッピオ君は苦笑いをしていた。
その後も色々な話をしながら店内を一通り見てレジを済ませた私たち。
あれやこれと買っていたら、パンパンに膨らんだ大きめのビニール袋が二つになってしまった。
「少し買いすぎちゃいましたね……」
「お腹空いてる時に買い物しちゃダメだったわ」
怒る吉良さんをどう宥めるか考えながら、ガシャポンの台がずらりと連なった脇を通り店外へ向かう。
「小さい頃は好きでよくやってたな」
大抵母親の買い物ついでだったので、母親にせがむと「そのうち捨てるのに」と小言を言われたものだ。懐かしさに浸っていると急にドッピオ君が私の服を引っ張った。
「名無子さん!あれ……!」
ドッピオ君が指差す方へ顔を向ける。
そこには、何台も並んでいる中の、とある一台の前にしゃがみこみ、一心不乱にガシャポンを回す男性がいた。
黒い丈の長い服を着て、ぶつぶつと独り言を念仏のように唱えている。どこからどう見ても不審人物。職質待った無し。
「よし、見なかったことにしよう」
「で、でも……」
戸惑うドッピオ君。それもそうだ。目撃してしまった以上、その責任を放置して帰ることは出来ない。覚悟を決めた私は、大量のカプセルを左手に抱え、右手で今まさに小銭を入れようとしているプッチさんの肩を叩いた。
「プッチさん」
「……名無子?」
振り向いたプッチさんと目が合う。私達がここにいる事が信じられないのか、幽霊でも見ているかのような顔のまま数秒フリーズしてきた。
「何故、ここに……いや、そんなことはどうだっていい。私のことは放っておいてくれ」
「私も出来るなら知らないフリして帰りたいです」
周りの目が痛い。あの人達、知り合いなのね、と買い物に来たマダムに噂されている気がする。ああ、もうこのスーパー来れない。
「とにかく、帰りますよ」
「それはできない……帰れないんだ」
「何かトラブルですか?」
「まだ欲しいのが出ていない」
「子供ですか」
腕を引き無理やり立たせようと試みるが、踏ん張り抗うプッチさん。特に鍛えてもない一般女性の力ではビクともしない。どうしようかと頭を捻らせるが、私一人じゃどうにもならない気がする。大人しく吉良さんを呼ぼうか迷っていると。
「名無子」
天使のような声から一転。低い声で私を呼ぶのはドッピオ君と入れ替わったディアボロさんだった。
大丈夫ですか。知らない人に見られてませんか。ジト目で見ていた私の気持ちを察してくれたのか、「ちゃんとトイレに行ったぞ」とポツリと呟いた。
「ああなってしまったプッチを連れて帰るには、スタンドを使うしかないと思ったからな」
ニヤリと笑うディアボロさんは、普段のニートっぷりからは想像できないくらい頼もしく見えた。今ならドッピオ君の気持ちも二センチくらい分かる気がする。
「どうしよう。珍しくカッコよく見えます」
「珍しくってなんだ!」


(家族で15題/TOY様)

ALICE+