「黒子、誕生日おめでとう。コレやるよ」
先に言っておくが、これは私の口から出た言葉ではない。
とても高校生とは思えない背が高すぎる火神大我の台詞だ。
「ありがとうございます」
黒子君は渡されたものを手に取る。どうやらバスケ選手のカードのようだ。バスケに詳しくない私にはどれほどの価値があるのかはわからない。だが、黒子君の顔を見れば、本人はとても喜んでいる(ただし表情からは受け取れない)ので、価値のあるものなのだろう。
まあそれはいいのだが……。
「まさか火神君に先を越されてしまうなんて……」
「あ?名無子、今なんか言ったか?」
「ううんなんでもない」
火神君は渡すものを渡すと、さっさと部活へ行ってしまった。残る私と黒子君。
ああ、どうしよう。勿論、忘れていたわけではない。
言い訳がましくなるが、黒子君の誕生日のことは三ヶ月前からずっと考えていた。
何をあげたら喜ぶのかな?好きなものは何だろうか。食べ物より残る物の方がいいだろうか。
これもダメ、あれもダメ。そうしてあれこれ考えていたら、このざまだ。
「ごめんね何も用意できなくて」
本当に申し訳なくて、出来ることなら今この場から綺麗に消え去りたいとまで思う程だ。
「いえ、その言葉だけでも十分嬉しいですから」
「黒子君……っ!」
いつもなら嬉しくて緩む頬を押さえながらその天使の微笑みを堪能するのだが、今はその純粋な笑顔が大きな槍となって心に突き刺さるだけだった。
「プレゼントはないけど、そのかわり何かしたいことがあったら遠慮なく言ってね!ジュース買ってこいとか!漫画買ってこいとか!なんでもいいよ!」
これじゃあただのパシリだが、黒子君に使われるなら本望だ。
「それじゃあ」と、黒子君は視線を窓の外へとやって少し考える。
「……今日部活が終わった後、一緒にマジバによりませんか?火神君抜きで」
「えっ!?」
驚きのあまり、変な声が出る。
「僕と名無子さんの二人きりで。なんでもいいとおっしゃっていたので。どうでしょうか?」
「わわわ私でよければ!!!ぜひ!!」
首を傾げてにっこりともいえないが優しい声音で訊ねてくる。こういう仕草は、黒子君のずるいところだと思う。
「決まりですね」
「うん!」
部活へ向かう黒子君が振り返って一言、
「今日は最高の誕生日になりそうです」と呟いた。
二人で飲んだ真冬のシェイクは冷たくて。私のほてった頬を平常に戻すのに丁度よかった。