小さな夢に蓋をして


 カントボーイとは、性器のみが女性のそれと同じになった男性のこと。それ以外の肉体や精神は全て男性のままの存在であり、⋯⋯有り体に言うと、股だけがなぜか女になってしまった男のことである──。




 無論、そんなちょっとニッチな、同人界隈しか知らないような存在を、神山智洋、ひいてはその恋人である重岡大毅が知るわけもない。

「ちょ、しげ、おいしげ、ちょっと来てーーーっっ!」

 眠気覚ましのシャワーを浴びようとしていたとあるアイドル、現状は半目で涎の跡を残していた男がそんな叫びを聞いたのは、午前五時を少し回った頃だった。幸い二人で住んでいる部屋は隣の部屋なんて一切気にする必要のない高級マンションで、だけどそれを抜きにしても恋人のそんな叫びを聞いたのは初めてのことだった。なんだなんだ、と風呂場へ向かっていた素っ裸の体で衣服を引っ掴んで脱衣所を出る。
声の主は、探すまでもなくすぐ近くにいた。トイレの前で、下に何も穿いていないまま、突っ立っている。だけどその様子はどこかいつもと違⋯⋯、え? あ、あれ? 俺の恋人って、一緒に住んでるカレシって、男やったよな?

「か、かみちゃん⋯⋯ちんちん、どこやったん⋯⋯?」

 間抜けにすぎる俺の言葉に、カレシは、かみちゃんは、泣きそうな顔で「わからん」と呟いた。


*


  そうは言っても俺たちはアイドルで、有難いことに忙しくさせてもらっている職業で、つまるところ時間がなかった。

「え、ちょ、夢? 夢ちゃうよな? しげちょっと俺の顔引っ叩いて」
「できる訳ないやろんなもん。え、他は? トイレ行って気づいたんやんな?」
「う、うん。俺もそう思ってしげが来るまでに一応全身確認したけどいつも通りやった。胸もほら、こんな感じ」
「⋯⋯いつも通りやな」
 躊躇いもなくバッとパジャマを捲り上げたかみちゃんの胸元は、小さな飾りがついているだけで見慣れた男のものだった。声も顔立ちも、普段となんら変わりない。ただ股だけだ。股だけが、どう見ても女のそれになっている。
「ちょ、⋯⋯っと、失礼するで」
 しゃがみ込み、仁王立ちしている(俺のカレシは基本いつでも漢らしい人だ)かみちゃんを下から覗き込んでみた。男性器がないのは遠目からでもすぐ分かったけど、こればっかりはちゃんと見ないとわからない。かみちゃんが頭上で、何か堪えるような声で言った。
「⋯⋯見ての通り、です」
「これ、ま、まん⋯⋯」
「それは言わんとこう」
「⋯⋯女性器やん!」
「そうやねん!!」
 かみちゃんは叫んだ。俺も正直叫びたかった。なんだ。なんなんだ。何が何だかわからないけど、正直めっちゃエロい! でも俺たちには今日、もう三十分もしない内に迎えが来る生放送の仕事が入っている!
「ちょ、ど、どうする!?? 休む!? 正直今体調不良って言ったら余裕やろ!」
「いやでもそしたら一緒に住んでるしげも下手したらグループ自体強制的に休みになるし、俺含め最近会った関係者全員検査になるやん。事実じゃないのにそんな大事にさせられへん」
「た⋯⋯確かに⋯⋯!」
 早口な分析に素直に頷く。俺の恋人は自分がこんな状態にも関わらず、というかそのせいで一周回ったのか、完璧なまでに冷静だった。冷静に、自身を分析している。
「とりあえず、しげはもうシャワー浴びる時間ないし顔だけでも洗って準備してきて。飯は向こう行ってから用意してもらってる分食べよ」
「え!? か、かみちゃん、行く気なん!?」
 俺の質問を彼は無視したから、長考に入っていることにすぐ気づいた。それならもう、俺は言われたことをやるしかない。慌てて洗面所に飛び込んで顔を洗い、最低限のスキンケアや髭剃りやらの諸々を済ませる。着替えをしに部屋へ戻る途中すれ違ったかみちゃんは、何かぶつぶつと呟きながらまだ考えている最中だった。本当に、行く気なのか? だって今日の仕事は長時間の音楽特番への出演で、スタジオでもない場所からの中継出演だから俺たちはほぼ丸一日拘束されることになる。それをこんな訳の分からない、病院に罹るにしたってどこの何科に行けばいいかすら不明な身体で一日過ごすなんて。ていうか、ていうか正直めちゃくちゃエッチなのにそれでずっと大勢のスタッフやメンバーに囲まれて過ごすなんて正直俺がい──
「しげ、ちょっと来て」
「っっっんぇ!?」
 頭を爆発させながら着替えている俺の元へ顔を出したかみちゃんは、ちゃんと下着とパジャマを穿いていた(安堵)。引っ張られるままリビングへ行くと、そこには普段ストレッチなんかの時に使うマットが二人分敷いてある。目をまん丸にしている俺を放置してかみちゃんはスマホを軽くいじったかと思うと、そこから俺たちの持ち歌を流し始めた。彼がスッとマットの上に立つのを眺めながら、「あ、今日やる歌や」と気がつく。
 そう、彼はどこまでいっても仕事の鬼で、プロ意識の塊だった。高いマンションとはいえ早朝だからいつもより控えめに、それでもいつものような力強さとキレをもったまま、彼は数分間を踊り切った。ほんの少し乱れた呼吸で、かみちゃんは「どう」と振り返る。
「正直に言ってや。いつも通り踊れとった?」
「⋯⋯踊れてた。何も変わらんと思う」
「そっか。⋯⋯うん、じゃあ行くわ。さっき測ったら熱もなかったし、全身ならともかく、股が女になってるくらいならバレへんやろ。これといって他に不調もないし、それであんな特番に穴空けられへん」
「⋯⋯そっかぁ⋯⋯」
さっきまでの動揺を完全にどこかへやり、彼ははっきりと言い放った。そのかっこよさと、自分のあまりの不純さに思わず眉が下がる。
「⋯⋯心配?」
「や、そら心配やけど。でもかみちゃん自身がいけるって言うんやったら信じるよ。なんか不調あったらすぐ言ってや?」
「ん」
 そう言うと、かみちゃんは頬を緩めて頷いた。と、同時に俺のスマホの着信音が鳴る。まずい。もう迎えが下に来てるんや。慌てて通話ボタンを押し「五分だけ待ってください」と言いながら、二人揃って大慌てで荷物をまとめた。


*



「一緒に住んでて二人揃って寝坊って、逆にすごいな」

 ひとまず一度目のリハーサルを終え休憩に入ったところで、酷い状態で車に乗り込んだ俺たちについて望が嬉々として弄りを入れてきた。用意されていたケータリングで腹ペコだった胃に食べ物を放り込みながら、「そういう日もあるやろ」と突っぱねる。かみちゃんは面目無いです、みたいな顔だけしてスルーを貫いていた。
 生放送の大型特番、しかも他の出演者とリレー形式でパフォーマンスを行うことになっているため、出演自体は夕方にも関わらずとにかくリハが多いし集合も早かった。他のメンバーもまだ眠そうにぼうっとしているやつが多かったからか、それ以上突っ込まれることはなかった。目を合わせて視線で「大丈夫?」と問うと、かみちゃんは他のやつには分からない程度に小さく頷く。それにホッとしながら、それでもリハーサル用の練習着に包まれた彼の下半身が今異常であること、それを自分しか知らないことを思うと、胸の底から心配を押し退けて湧いてくる高揚を抑えることはできなかった。
 その後も何度かのリハはつつがなく進み、彼が誰かと喋ったりスタッフに指示を受けるたびに俺は内心ヒヤヒヤしつつも、何とか本番直前を迎えていた。⋯⋯そう、つまり着替えだ。
 名札のついたラックにかけられた衣装に、メンバーはいつも通り平然と着替えていく。すっかり対策を忘れていたそれに俺が焦っていると、かみちゃんは何の躊躇いもなく上を脱いでそのまま衣装に着替えた。
(⋯⋯⋯⋯ッッッ!!)
 思わず声が出そうになるが、ここで変な声なんか出して何一つ気づいていないメンバーの注目を集めるのが一番良くない。必死で平然を装っている俺の隣でかみちゃんは下を脱ごうとし──ごく自然に、その途中で「あ、そうや」と呟いた。そのまま下の衣装を片手に、どこかへ出ていく。メンバーや近くにいた誰も、それを全く気に留めなかった。
「⋯⋯て、てんさいや⋯⋯」
「は?」
「なんもないです⋯⋯」
 帰ってきた時には彼は完全に衣装を着替え終わっていて、スマホで「どうやったん?」とメッセージを送ればすぐに「普通にあのままトイレ行って中で着替えた。誰にも怪しまれんかったで」と返事が来た。俺の恋人は、演技も上手ければ頭まで良い男だった。
 数十分後、ようやく迎えた本番でも、かみちゃんは本調子のまま、誰にも怪しまれることなく出番を終えた。終わりの着替えの際に使った手段はさっきとは違ったが、さっき以上に見事に誰にも怪しまれることなく彼は普段着に戻っていた。マジシャンか? そうしてようやく長かった一日が終わり、この後スケジュールが入っているメンバー以外は自宅へ送ってもらえることになった。あらゆる意味で疲弊した心身にため息を吐きながら送迎用のバンに乗り込んで一番後ろを陣取ると、すぐ後に乗り込んできた淳太が隣へ座ってくる。
「⋯⋯疲れた」
「な、流石に今回大変やったわ」
「いや絶対お前より俺の方が疲れてるから」
「は?」
 殴りかかってきそうな勢いの最年長様をいなしていると、スタッフと話していて遅れていたかみちゃんが車に乗り込んできた。珍しく俺の方へ迷うことなく近づいてきたから、すぐ察してくれた淳太は「めずらし。よかったな」と言いながら席を移動してくれる。かみちゃんを窓際に座らせてすぐ横で詰めて座ると、そっと肩へ頭を載せてきた。
「⋯⋯さすがに、疲れたやろ」
 誰にも聞こえないよう、小さな声で囁く。
「疲れたわ。⋯⋯でもなんか、それより⋯⋯」
 そう言うと、かみちゃんは少し頭を持ち上げて俺の方を見た。なに? と目で聞いても、何も言わずまたすぐ元の体勢に戻る。まぁ、この子はいつもこんな感じだ。
「体調、大丈夫? なんかおかしいとことかない?」
「ないよ。⋯⋯でもこれ、まさかずっとこうってことないよなぁ」
「うーん⋯⋯流石に数日経って治らんかったら病院行ったほうがええかもね」
「どこの病院やねん⋯⋯」
 そう言って小さく笑ったきり、かみちゃんは目を瞑った。きっと俺の比じゃないほど疲れただろうし、寝かせてあげよう。そっと肩を抱き寄せ、髪を撫でる。そうすると腕の中でかみちゃんが小さくみじろぎ、息を吐く音がした。


*


「はーー、疲れた⋯⋯」
「よう頑張ったなぁかみちゃん、お疲れさん」
 玄関のドアを閉め二人きりになった瞬間、かみちゃんは全身の力が抜けたようでふっと崩れ落ちかけた。それを受け止めながら頭を撫でてやり、ゆっくり座らせて靴を脱がせる。その間もかみちゃんはぼうっとしていて、明日はロケのスケジュールが入っているという彼がいよいよ心配になってくる。今日一日はなんとか乗り切れたし怪しまれることもなかったけど、それがずっと続いたら? もし誰もいない環境でうっかり誰かにバレたりして、それが良からぬことを考えるような相手だったりしたら──、そこまで考えて思わずブルブルっと頭を振った。明日の朝まで様子を見て、それでも治ってなかったら体調不良で休ませよう。もしかしたら、流行病よりよっぽど大変なことが彼の身に起きてるのかもしれないのだし⋯⋯、
「しげ」
「⋯⋯ん?」
「考えすぎ。今日みたいにメンバーみんなで着替える機会なんかそうそうないし、それ以外衣装替えなんて大体一人にしてもらえるやん。もしもの事故に備えてトランクス派になっとけばええねん」
「でも、」
「てかこれさぁ、もしこのまま一ヶ月とか戻らんかったら、生理きたりすんのかな。そしたら、子供つくれたりして。まぁあかんけど」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯ごめん」
 同性同士で恋をしている俺たちにとってそれは笑えない冗談で、普段のかみちゃんなら口が裂けたって言わないようなものだった。きっと疲れてるんだ。だから俺は怒っていないことを示すように、そっと髪を撫でた。
「疲れてんねん、あんだけ頑張ってんから。な、今日はもう、風呂入ってご飯食べたらさっさと⋯⋯」
「あのさぁ、ムラムラすんねん」
「⋯⋯⋯⋯ん?」
「今日ずっとそうやった。しげが着替えてるとことか裸とか見慣れてんのに、なんかムラムラしてさぁ。ほら、見てや」
 そう淡々と言い、かみちゃんは膝立ちになってズボンも下着も全て下ろした。その下着からは、つうっと、何かが糸を、引いている。思わず後ろへ手をついて後退りながら無意識にごくりと、唾を飲み込む。顔へ視線をやると彼は紅潮しきった顔で俺を見下ろしていて、その目は熱っぽく溶けていた。あれ、あれ? 空気が急激に変わっていくのを感じながら、俺はさっきの車での彼の姿を思い出す。

『疲れたわ。⋯⋯でもなんか、それより⋯⋯』

「ほらしげ、触ってみて」
 そう言って俺の手を掴み、されるがままのそれを自身のそこへ導いた。クチュ、って、目眩がしそうな音をたて、俺の手を彼は好き勝手に動かす。そう、その様子はまるで、俺の手で自慰をしているかのようだった。
「ちょ、かみ、かみちゃ⋯⋯」
「ん、ぅわ、撫でてるだけやのに、それがしげってだけできもちい、すご⋯⋯」
「えぇ、そん、い、いやかみちゃん、や、やめよって。まだなんでこんな事になったんかもわからんし、危ないかもしれんし、俺かみちゃんが心配で」
「じゃあ、なんで無理やりにでも止めへんの?」
 割れ目のあたりを彷徨っていた俺の指をとめ、かみちゃんは舌なめずりしながら微笑んだ。座り込んだまま動けない俺に顔を寄せ、彼の甘い声が囁く。
「覚えてる? しげさぁ、付き合う時、性別とか関係なく俺って人間を好きになったんやって、言ったやん」
 クチュ、グチュリ。どんどん粘度を増していく彼のそこを撫でさせられながら、吐息のふれる距離で、彼はあっけなく俺を落とした。
「じゃあ、全部堪能しとかんでええの?」
 これで耐えられるやつなんか、います?




「んッ!あ、しげ、しげぇ⋯っ」
「ここ?なぁかみちゃん、ここ気持ちいの?」
「そ、そこ、き、きもちぃ、やばい、す、すご、ァ、〜〜ッ!」
「あーー⋯⋯かわいい、可愛すぎ、だいすき⋯」
 ベッドに放り込んでさっき散々焦らされた指を突っ込んだら、ローションを使ってもいないのにぐちゃぐちゃだったそこは俺の指をみるみる飲み込んでいった。普段ならありえないそれに、興奮と罪悪感が混ざり合う。着替えがどうとか言ってたけど、この子は一体いつからここをこんなふうにしてたんだろう。こんな状態で、生放送の、全国ネットの番組で歌って踊ってたのか? 俺のこと考えて、本来あるはずのない穴をドロドロに濡らしながら?
「し、しげ、もう指いいから、」
「えぇ?」
「ん、ンァ、そ、そこ触んなって⋯⋯ッ」
「そこって何?ちゃんと言ってや、かみちゃん」
 二本入れた指で中をトントンと叩きながら、ちっちゃくなっちゃったちんちんの名残を親指で何度も押しつぶす。初めは隠れていたそれが段々と顔を出してきて、その度に彼の感度も上がっているらしい。吸い寄せられるように口を寄せると、彼が怯えた声で「うそ、」と呟いた。試しにじっとりと、押しつぶすように舌で嬲って見る。ガク、と大きく身体が揺れる。
「ッッッ!!?♡♡♡ァ、う、うそ、や、やめ」
「やめへんよ」
「しげ、ほんまにそこ、あ、ウアァッッッ!!!♡」
 じゅる、っと今度は勢いよく吸い上げた。ようやく剥き出しになったそれに集中するべく片手で周りを押さえ、吸ったり、舐めたりを繰り返す。その度に彼はもんどり打って悶えるから、押さえるのが大変だ。
「ァ♡ぃ、いた、いたい、いたいぃ!!♡」
「痛いん?ちゃうやろ?」
「き、きもちよすぎて、いたっ!♡ァ、ゆび、ゆび同時やめ、う゛ぅ゛〜〜ッッ!♡♡」
「きもちいならええやん。な、言ってかみちゃん、どこ?どこ吸われて、舐められて、痛いくらいきもち良くなってんの?」
 クポクポとやらしい音を立てて内側を刺激し続けながら再度そこへ口を寄せる。自分の唾液をたっぷり絡めてジュルジュルと吸い上げると、かみちゃんは声も出せないままガクン、ともう一度、今度はさらに大きく震えた。持ち上げられたままの足が、軽く痙攣している。
「かみちゃん、イっちゃった?でも言えるやろ?男の子のかみちゃんはどこ舐められてきもちよくなってんの?」
「⋯⋯ハッ、ハッ⋯⋯ァ、うぁ⋯⋯♡」
「おーい、かみちゃんって」
 ぺち、と軽く頬を叩くと呆然としていたかみちゃんの視線がふっと戻り、目が合う。
「な、きもちよかった?おとこのこやのにクリ舐められて吸われて、イっちゃったんやろ?」
「⋯く、クリ⋯⋯?」
「そうやん、昨日まで立派なん付いとったやん。あれどこやっちゃったん?こんなかわいいクリにしちゃってさぁ」
「や、それやめて、言わんとって…」
「なんで?ほんまのことやろ?」
 自分から誘ったくせに快楽が予想を超えていたのか、かみちゃんはすっかり消極的になっちゃって腕で顔を覆って「ちがう」と繰り返すばかりになってしまった。それを無理やり引き剥がすと彼は悔しそうに目を潤ませていて、それが今朝のかっこよさと入り混じり、普段この子に感じることなんて滅多にない嗜虐心が顔を覗かせる。ぐり、と親指でそこを強く押し潰すと、かみちゃんは声にならない悲鳴をあげて指が突っ込まれたままのそこからまたドロリとした汁を溢した。うわ、もう、なんやこれ。頭おかしなりそう。
「⋯ほら、どう見たってそうやん。言ってや。どこ触られて布団こんなビシャビシャにしてんの?なぁ、言えって」
「⋯⋯⋯り⋯」
「は?」
「⋯く、クリトリス!クリ、しげに触られんのがきもちよくて、さっきから何回もイっ⋯⋯ッッ!」
 最後までは聞けなかった。二本だったそこにもう一本指を突っ込み、浅いところを集中的に何度も押し上げながら陰核を吸い上げる。
「ぁ、あ゛ぁ゛ッッ!♡し、しげ、おかしッ、なん、なんかくるッ!♡♡」
「⋯⋯」
「し、しげ、って!〜〜〜ッッッああ!!♡……ひ、ぁ……♡」
 呼吸の合間に空いた片手で激しく嬲ると、悲鳴みたいな声をあげて悶えていたかみちゃんが大きく身体をびくつかせ、夢中で口を寄せていた目の前から無色の液体が勢いよくぼたぼたと溢れ出て俺の手や顔を濡らした。一瞬呆然とそれを眺めてようやく彼が潮を噴いたことを理解した瞬間、俺の頭は、なんだろう、なんか、パーンって。思考が飛んでいった。息荒く身体をぐったりさせている彼の足を黙って持ち上げ、愛液と潮に濡れたくったそれにガチガチに勃ち上がっていた自身を押しつけてそのまま勢いよくブチ込んだ。
「ッッッッ!!?♡♡♡⋯⋯っえ、し、しげ、ま、あ、ああっ!!♡」
「かみちゃ⋯⋯ぁ、かわいい、だいすき、すき、すき⋯⋯」
「あ、あ⋯⋯っん、ンン♡んあ、ああ、ぁ、や、らぁッ♡」
「やじゃないよ、かみちゃん、な、わかる?潮、噴いてんで。そんなきもちよかった?俺のは?いつもとちゃう?」
「わ、わからん…ッ♡うぁ、も、とまって!ぃいッ!!ァ、はな、はなして!」
「えぇ、嫌や、せっかくこんなかわいいかみちゃん居んのに⋯⋯堪能していいって、言ったやん」
「いった、いったけど、ちょっと待って、って、ンむ!」
 こんなきもち良さそうな顔してるくせに待てとか言うから、唾液に塗れた唇を塞いだ。細い舌を絡め取ってじゅって吸い上げたり、上顎を舐めたり歯列をなぞったり、あぁ楽しい、もうこの子の全部まるごと食べてまいたくなってきた。その欲求のまま深く深くまで口付けながらごちゅごちゅと腰を打ち付けていると、くぐもった声でうめきながら何度か痙攣していたかみちゃんの声がだんだんしなくなってきた。諦めたんかな?そう思って視線を上げると、なんか視線がどっか向いちゃってる。
「かみちゃ?」
「ァ⋯⋯ん、ん⋯⋯♡」
「……トんでもうた。いややぁ、起きてやかみちゃん、もっときもちいことしようやぁ」
「ン、ン、あっ、う、うぅ、」
「おきて、おきて〜…かみちゃん⋯⋯かわいい、かわいい俺の、俺だけの、かみちゃん……」
 ごちゅごちゅと奥を突き続けていると、彼は意識を飛ばしたまま甘イキしたのか膣内がキュッと絞まった。突然のそれに驚き、思わず達しかけたのをグッと堪える。それでも、かみちゃんはどことなく穏やかな顔でまだ眠ったままだ。かわいい。意識ないままイッちゃって、おれの搾り取ろうとしてるんや。もう一度起こそうかと思ったけど、まぁいいや。好きにしていいって、いっとったし。意識がなくてもピンと立ったままの胸の飾りに口を寄せ、唾液を垂らしてから噛み付いた。そのあと丁寧に舐めてやれば、健気なそれは真っ赤になってピクピク震えている。かわいい。流れるように下を見れば同じくらい小さな陰核が寂しそうにしていて、思わずそれにも手を伸ばす。ぐりぐりと親指で潰すと、囁くような声を漏らすだけだったかみちゃんの反応がまた大きくなり始めた。
「ァ、⋯⋯あ、あ♡⋯⋯ぁん、ん、あ⋯⋯♡」
「⋯ふは、あん、やって……かわい⋯いつもなら、絶対言わんのに、な⋯」
 見たことない姿だらけの彼に、欲がどんどん溢れて止まらない。いつもより薄く見える下腹に思わず手を伸ばしてさすってみると、俺のもんの形までわかるようなきがした。腰の動きを再開し、また奥までドチュドチュと叩きつける。
「ん、ぁ、あー、きもち、膣ってこんなんやっけ、忘れたなぁ、ぐちゃぐちゃやん⋯⋯」
「は、あっ、ン⋯⋯ッ♡♡ふぁ、あっ、あ⋯⋯?」
「⋯あ、おきた?もぁ、さみしかったで、かみちゃん」
「え、あ、アアッッ!♡し、しげ、俺もう、ンァ、む、むりやって……!」
「大丈夫大丈夫、何回落ちたって俺が起こしたるから、な」
「いや、いややぁ⋯⋯♡ッあ、奥、奥おかしなる、ウゥ⋯⋯ッ、や、あぁぁぁっ!♡♡」
「ええよ、おかしなって……俺がおるから……あ、こっちも触ったらなな」
 抽挿を繰り返しながら、剥き出しで震えていた陰核を雑に手のひらで素早く擦りあげる。そうしたらかみちゃんの目がぐり、って上を向いて、じたばたと脚が揺れた。
「あ゛ぁ゛、あ゛ー……♡♡♡い、いく、イぐぅ……♡」
「ん、ええよ」
「〜〜ァあ、ひ、あ、あ゛ぁ゛ッ!♡♡……あっ、んひ、ァ……」
 びくん、と一際大きく痙攣したあと、かみちゃんはふっとまた脱力してしまった。ぷしゃ、ぷしゃ、って断続的に潮が溢れつづけて、信じられないくらい、エロい。思わず一度自身を抜いてそこに口を寄せて舐めてみたら味も匂いもしなかったけど、なんかあまい、きがする。
 ぴちゃぴちゃ音を立てて舐めていると、派手にイって半ば意識を失ってるのにかみちゃんは健気に身体を揺らして反応していた。かわいい。こんな派手に何回もイってんのに、女の身体ってすげぇなぁ。液体を舐めていた舌を無意識にそのまま割れ目の中へ差し込むと、さすがにかみちゃんは気づいたようでびくりと身体を跳ねさせた。
「ァ、な、なにして……」
「ン、なぁ、…かみちゃんのここ、んま、いで」
「う、うそ、やめ、やめて、〜〜ッあ♡き、きもちい、きもちい、からァ!♡♡」
「んふ、なら、ええやん……」
 ぴちゃぴちゃ、わざと音を立てながら奥まで舌を入れたり、上っかわのザラザラしたとこ舐めたり、全体を口に含んで夢中になって貪っていると奥からさらにどろどろした液体が溢れてきて、飲みきれないそれが口端から零れるけどどうしても口は離せない。空いた手で無意識に自身を扱いていると、ともすれば気づかないほどそっと、肩に手が置かれた。
「お、おれ、も、しげの、する……」
「……ええの?」
「ん……ほら、はやく」
「……じゃあかみちゃん、俺の顔の上乗って?」
「えっ」
 おそらく横向きのシックスナインを想定していたかみちゃんは、目をまん丸にして身体を硬直させた。だから俺はその肩を掴み、されるがままになっている身体を膝立ちさせ、寝転がった自分の顔を跨がせた。顔の真上でかみちゃんの、いつもは穴を舐めさせてなんかくれないかみちゃんのそこがヒクヒク揺れながら涎をぽたぽたと俺の頬のあちこちに落としている。その腰を掴んでゆっくり落とさせると、元々柔らかいかみちゃんの尻肉がずっしりとのしかかった。
「し、しげやめよ、お、重い、やろ」
「重いわけないやん。……ン」
「アッッ……♡ぃ、〜〜〜ん、んぅ、ぁ、き、きもち、すご…♡」
「かみひゃ、おれのも、してくれるんやろ?」
 浅い所で舌を動かしながら促すと、かみちゃんは膝を震えさせながらゆっくり前屈みになり、俺の硬く勃起したままのそれに恐る恐る触れた。
「……ッ」
「かった……しげ、まだ出してへんの…?」
「ん、我慢しとった……ぁ、上手上手」
 昨日まで同じものを持っていただけあり、彼は優しく、だけど的確に気持ちのいい所を触ってくる。だんだん慣れてきたのか、手は竿を握りながらカリ先を舐めたり、玉を撫でたりし始めた。
「っあ、あ゛ー……、気持ちい」
「はぁ……ぁ、ん、んん、ああッ!♡♡し、しげ、そんな舐めんとって……っ♡お、俺がしげを気持ちよく、するからッ!」
「えー?はは……でもそういう体位やし……」
 きもちいし初めてやるような事を頑張ってくれているその姿はかわいいけど、今俺の目の前にはぼたぼたとあまい涎をこぼすご馳走が差し出されているのだ。躊躇なくそれら全てを舐め取りながらもう一度舌の届く限り奥まで差し込むと、かみちゃんは腰を震わせて一瞬立てた膝が崩れかけた。
「アッッッ……♡あ、あ、しげ、しげぇ」
「……ん、かみちゃん、手ぇ止まってるで」
「ァ、だって、だってこんなん♡ン、んァ、あ、はぁ、き、きもちぃ……♡」
「も〜、ほら、手動かして、舐めて。気持ちよくしてくれるんやろ?」
「そ、そんなん、むりやって……」
 そう言いながらかみちゃんはなんとか震える手で俺のを扱いたり舌でちろちろ舐めたりしてくれてるけど、正直処女が一生懸命じゃれてるようにしか見えない。……ま、ある意味処女か。止めていた舌を勢いよくグチュグチュ抜き差ししながら空いた手で陰核を何度もすり潰すと、かみちゃんは悲鳴をあげてとうとう俺の腹の上に倒れ込んだ。そしたら目の前にどろどろ本気汁を流す割れ目が差し出されるわけだから、俺は今度は指を二本そこへ突き刺し、お腹の内側、存在をはっきり意識させるようにグイグイと押しながら膣口を何度も激しく抽挿した。Gスポット、なんて存在もうむかーし過ぎて忘れちゃったけど、たぶんこの辺やったやろ。現にかみちゃんは、言葉になってない声を断片的にあげながら震えている。
「あ♡♡あ、ぃっ、く、いくいく、しげ、しげ、……♡」
「うん、おるよここに」
「イッ……ッッッ!!♡♡♡……あ、あ゛ぁ゛〜〜……い、いってる、イってんのに、ィ……っ」
「うん、大丈夫大丈夫」
「と、とまらん、イくのとま、ァ……ッッッ!♡」
 ぷしゃ、と今度は勢いよく潮が噴きでた。かみちゃん、潮噴きやすい体質やったんやな。一度も欲を吐き出していないせいでぼんやりした頭のまま、激しく抽挿し続けた指をゆっくり抜いてやると、それはふやけてベタベタになっていた。周りに付いている潮が勿体ないからぺろりと舐めてやりつつ、力なく倒れている身体を引き起こす。そのまま背面座位の形で後ろから突き刺した。
「…………〜〜ッッッ!!!!♡♡♡」
「っあ、あ〜〜、きもちい」
 自重で奥深くまで突き刺さったみたいで、かみちゃんは声もなく震えている。その表情が見えないのは残念だけど、仕方ないからそのまま腰を小刻みに突き上げた。
「ッア♡あ、ぅう♡…ひ、し、しげ…ッ」
「な、に?」
「あっ、うぁ、き、きもちい、やばい、こんなん、おかしなる…ッ♡」
「な……おれも、やばい……ちょっと一回、だすな?」
「んぇ、わ、ッあぁ!!?」
 突き刺したまま前へ押し倒し、獣みたいにバックの体勢を取る。かみちゃんはシーツにしがみつきながら必死に快楽に耐えていて、俺が勢いよく突くたびにその背と綺麗に染めた髪が揺れた。……あぁ、そろそろ顔見たいな。黙って肩を掴みひっくり返すと、ナカに刺さったものがいい所を抉ったらしい。
「ッあ゛!♡♡ちょ、かえるなら、言って……っ!」
「ん、ごめん顔見たくて……あー、かみちゃんかわいい……」
 涙と涎でぐちゃぐちゃになった顔を撫でながら抽挿を繰り返す。
「ぁ、あ、あぁ♡しげ、っン、すき、すき♡♡」
「おれも、おれもかみちゃんが、すき……」
 正常位になったことで自然と顔が近づき、流れるようにキスをした。お互いぼんやりと目を合わせたまま、口付けたり、舌だけを絡めあったりする。ゆるい動きを少しずつ速めていくと、かみちゃんの表情が恍惚としてきた。
「あ゛ぁ♡あ、あ゛ー……、イきそう……♡」
「ん、ええよ…おれもイくわ」
「…ぁ、いく、いくいく、んん……ッ!♡♡」
 かみちゃんが身を震わせ、腟内がギューっと締まる。カスみたいな理性でなんとか引き抜き、彼の下腹部に俺も精を吐き出した。ぼんやり焦点の合わない目で息を切らしているのを眺めながら、その白濁をなんとなくいつもより凹んだ下腹に塗りたくる。そんな些細な刺激も響くようで、そのたびにかみちゃんはぴくぴくと身体を揺らした。しばらくそうしてぼうっとした後、自然と目が合う。
「……かみちゃん、まだいける?」
「んぇ……?たぶん……?」
「ええよ、しんどかったら寝とって」
 言葉だけは優しいものを掛けながら、ぐちゃぐちゃのそこに躊躇なくまた自身を突き刺した。
「ッん!♡…あ、あぅ♡ん、ん……ッ」
「かみちゃん、気持ちよさそうやなぁ。ここ好き?」
「んぁ、う、うんッ……そ、そこ、きもちい……ッ」
「そっかぁ、いっぱいトントンしたげるからなぁ」
「ぇあ、あ、あ゛ぁ゛ッ♡♡ぎ、もちぃ、しげ、ぅ、ゔぁ、んん〜〜ッッ♡」
 だんだん掠れ始めた声でさっきよりは幾分ちいさくなった悲鳴をあげながら、かみちゃんが身体をびつくかせる。横向きにさせた身体の片脚を持ち上げて後ろから奥深くまで差し込み、たくさん穴の空いた耳を舐め上げる。幾つかつけっぱなしにしているピアスは舐めちゃうと痛いみたいだからなけなしの理性でそこだけ避け、無心で耳穴をグチュグチュ舐めつづれば、元々耳が弱いこの子はもうそれだけで甘イキを何度も繰り返して震えていた。ずっと抱え上げたままの左脚が辛そうで、ごめんな、と思いながらもやめてあげられない。
「ぅ、あぁッ!や、あ、みみ、みみやめ……ッ♡、うぅ、んん!!♡♡」
「はぁ、かみちゃ、かみちゃん……」
「う、あ……♡ぁ、れ?な、なに、これ」
「ん……?あれ、奥、なんかあたる」
 ドチュドチュ突き続けてたいた奥に、さっきまでなかったはずの突き当たりみたいなものが当たった。なにこれ、と思いながら突き続けると、かみちゃんは涎を垂らしてなにか呻いている。
「ぁ、あ……♡や、しげ、それあかん♡それ、あかん、やつ……ッ♡♡」
「えぇ?でも、きもちよさそぉ……え、あ?」
 ふと思い至り、横抱きにしていた身体を正常位に戻した。正面から見たかみちゃんの顔はさっきより明らかにとろけてて、意識はあるはずなのにどこか焦点が合っていない。さっき白濁を擦り付けた下腹部に、少し力を入れてぐっと手のひらを沈めた。そしたらかみちゃんは、ぼんやりしていた目を見開いて「かはッ♡」って息を零す。
「かみちゃ……かみちゃん、これ、子宮?ほんまに子宮、あんの?」
「ンあ、わ、わからん…ッ♡押さんとっ、て!」
「かみちゃん……かみちゃん、ほんまに女の子になっちゃったんや、ほんまにここに子宮あって、おれのために降ろしてくれたん……?」
「な、ァ、なに?しげ、なにいっ、てんの?」
 ずる、とゆっくり引き抜いてはもう一度奥まで差し込み、ゆっくり引き抜き、を繰り返す。そのたびに先にこちゅ、ってさっきまで絶対なかったはずの壁があたって、あたまおかしくなりそう。全身の血液が、かみちゃんのふわふわの膣に包まれたそれへ集まっていくのがわかる。
「ぁ、あ……♡なに、なに、これ♡しげ、こわい、こわい……ッ」
「こわないよ、きもちいだけ、そうやろ?」
「き、きもちぃ、ぅ゛あ♡ あ゛〜〜ッ♡♡」
「かわい、かわいい、かみちゃ……な、こわいないから……あかちゃん、つくろ」
「ァ、ふぁ♡……んぇ?」
 薄い下腹部、その下にきっとある子宮を何度も何度も撫ですさる。さっき出した精液が乾き始めていたけど、それすら上からなんか届かんかな、とか思いながらグッて親指で押す。そう、たしか、たしか押したら排卵しやすいんじゃなかったっけ、なんかで聞いた気がするけど興味なかったから覚えてへん……。
「ぁ、しげ、ッしげ?んッ♡お、おすなッて!♡おい、おち、おちつ、ぁあ゛♡おちついて!」
「ぜんぶ、ぜんぶ中でだしたるからな、だから、だからあかちゃん、つくろ……俺とかみちゃんの、ッ、すき、すきや、だいすき……」
「し、しげ……!」
「ほら、ここ、ここごちゅごちゅしたら、喜んでるで?かみちゃんのここも、おれの精子ちょうだいって、言ってる……」
「ぁ、い゛ぁ♡ちが、いってない、ゔぁ、いってへん、からぁ……!♡♡」
「ぁは、かみちゃん、うそつきやぁ、かわいい……でもここ、開いてきた、おれのこと、入れてくれてる」
「う、うそ、うそ!?♡やめ、やめてって、ぁ゛あ……ッ♡し、しげ……!」
「あー、きもちぃ、すご……出すから、ぜんぶ、ぜんぶ出して、俺のための子宮、いっぱいにしたるからな……」
「や、やぁ、やめ、て……ッ」
 一秒でもはやくこのかわいいナカをいっぱいにしてあげたくて、抽挿のペースをあげた。それなのにかみちゃんは、逃げるみたいに腰が引けてる。何度もイった身体ではほんの少ししか動けてないけど、さみしい。
「かみちゃん、逃げんとってやぁ、つくろ、俺とかみちゃんの、あかちゃん…そしたら一生、かみちゃんと一緒や……」
「んぁあッ!♡ち、ちがう!そんなん、ちがうぅ……!」
「なに…?なにがちゃうねん、ほら…ここ、吸い付いてくるし……あかちゃん出来たら、ずっと一緒、に………」
 ふと、自分の口から出た言葉に違和感を覚えた。あれ?なんだこれ、今おれ、何を言った?抽挿を止めて顔を上げると、かみちゃんはいつの間にか顔を覆って小さくしゃくりあげていた。呆然としながらその腕を払い除けると、目を真っ赤にしたこの子が、だいすきな恋人が、泣いている。

「か、かみ、ちゃ……」
「…ッた、堪能、しろとはいったけど、い、いま自分で言ったこと、ちゃんと考えろ……っ!」

「……………ご、ごめん、ごめん……っ!!かみ、かみちゃ、お、おれ、俺頭おかしなっとった、ごめ、そ、そんなん、ほんまは思ってへんのに……!」
 気づいたら、勝手に俺の目からもぼろぼろと涙が落ちていた。すぐに優しくナカから自身を引き抜き、涙に濡れた頬を撫でる。それでも言ってしまったことは取り返しがつかなくて、かみちゃんの涙は止まらない。
「ずっと、一緒や……!赤ちゃんなんか居らんくたって、男同士やって、一生、一緒に居るんやん……!」
「そう、そうやんな、そう約束しとったやんな、ごめん、俺、俺、ほんまに、どうかしとった、あんなこと、あんなことほんまに思ってへんのに……!」
「………な、なかんとって、しげ…」
「だって俺、おれ、最低や……!二度と、二度と取り返しのつかんこと、」
「ええよ、大丈夫、大丈夫やから、いつものしげじゃないって、わかっとったから、……な?」
「かみ、ちゃ……っ」
 俺が最低なこと言って泣かせたのに、かみちゃんはそう優しく微笑んだ。俺の頭を抱き込んだ彼の手にトントンと撫でられながら、この子と二人でひっそり、永遠を誓った日のことを思い出す。誰にどんな目で見られても、周りがどんな人生でも、関係ないって、お互いがいればそれだけでしあわせやんな、って……。
「…⋯か、かみちゃん……すき、大好きや、大好き、やねん……ごめん、傷つけて、ごめん……」
「ええよ、俺も似たようなこと言っちゃったし。こんな状況、頭おかしなるよな」
 そう言って、かみちゃんは目尻を下げて笑いながら俺の顔を覗き込んだ。わらっていいのかわからんそれに、俺は俯く。すると、だらんと投げ出していたかみちゃんの両脚がゆるく俺の腰へ回った。
「……?かみちゃん?」
「な、しげ。自分の身体やからさ、自分で何となくわかるねん。これ、きっとすぐ元に戻る」
「…え、」
「だから、……だからさ、最後までやろ?中で出して、俺ん中しげでいっぱいにしてや。ゴムなんかせんと、あとで掻き出すこともせんと、しげのぜんぶ、俺の中で、かんじてみたい……」
 最後の方、かみちゃんの声は涙に震えていた。堪らなくなって、俺もぼたぼたと涙を落としながらもう一度彼のそこへ自身を沈める。なんの引っかかりもなく奥まで入り込んだそこはやっぱりいつもとは違って、だけど、かみちゃんなんだ。
「かみちゃ、わかる?奥、これ当たってんの、いたない?」
「い、いたないよ、きもちい、ぁ、なぁ、すごいなぁ、しげ」
「うん、不思議やなぁ……」
 とん、とん、と緩やかに奥を突きながら目元の涙を指先で拭う。さっきと違って穏やかな快楽にかみちゃんは身を委ねていて、心地よさそう。
「ぁ、あ…っ♡ン、……しげ、しげは?しげも、きもちい?」
「あたり、まえやん……」
「そ、か…よか、ったぁ…♡ん、んんっ……♡♡な、なぁ、しげ」
「ん……?」
「これ、これさぁ、なんかかみさまがくれた、ご褒美みたいなゆめ、なんかな」
「……そう、やな。いっつも、がんばってるし」
 同性同士で恋に落ちて、死ぬまでずっと一緒にいる約束をした俺たちだけど、こんな夢を一度も見なかったわけじゃない。だけど、だからこそそれが悲しくて、よくわからん感情で胸がいっぱいで、涙と唾液に濡れたかみちゃんの唇をそっと吸った。
「っん、ん……♡あ…ん、しげ……」
「……だいすき、大好きやで、どんなかみちゃんも、ぜんぶ」
「……うん……うん。おれ、も、どんな自分でも、どんなしげでも、きっと、好きや」
 そう言って、かみちゃんは天使みたいにやさしく微笑んだ。……あぁ、綺麗だ。俺、だっさい奴やなぁ。ぱちゅ、ぱちゅ、ってゆっくり奥を突き続けていると、穏やかだったかみちゃんが段々息を荒らげ始める。
「ぁ、ア、んあ゛……ッ♡し、しげ、いく、イく、かも……っ」
「ん、おれもそろそろ、かな」
「ぜんぶ、ぜんぶだして、な?」
「うん、出すよ、かみちゃんのここ、俺のでいっぱいにしたるから……」
 下腹を撫でながら言うと、今度はかみちゃんは嬉しそうに目元を和らげた。その両手を握りしめながら、少しづつ動きを早めていく。
「あ゛っ♡あ、きもちぃ、ッすき、すき…!」
「うん、うん……ッおれも、おれも大好きやから、ずっと、⋯ずっと、一緒に居ろな」
 ぽろ、って最後の一粒がかみちゃんの頬からシーツへこぼれ落ちた。
「……ッうん、おる、おる……っ」
 最後の絶頂はあっけなかった。びくん、と静かにかみちゃんの身体が揺れ、それにつられるように俺も身体を震わせる。一番奥に打ち付けたまま吐き出した欲が、彼の、仮初の奇跡へ流れ込んでゆく。かみちゃんははふはふと息を荒らげながら、下腹に手を当ててそれをじっと感じていた。
「……どう?」
「………めっちゃ、しあわせ。こんなん、一生に一回で充分やわ」
 止まったばかりの涙を雨のように流しながら、かみちゃんはわらった。堪らなくなってギュッと抱きしめ、その首筋に顔を埋める。この頃にはもう、彼の感じている「すぐ元に戻る」ことが、俺にも伝わっていた。
「……まぁ、さ。たまにはこういうのもありやな、でいいんちゃう? 俺が言うのも、あれやけど」
「……ふは、そうね。あー、終わっても別に風呂入らんでいいって、さいこう」
「な。今日もう、このまま寝てまおか」
「そうしよ。……なぁしげ、このまま抜かんとって」
「……うん」
「へへ、あー、あったかい……」
 そう微笑みながら、かみちゃんは既に微睡んでいる。かくいう俺も、何故かやたらと眠い。あぁそういうことかぁってきっとお互い思いながら、俺たちは手を握りあって眠りに落ちた。


*


 翌朝、二人揃って早くに目を覚ますと、予想通りというべきか、かみちゃんの身体は元のそれにすっかり戻っていた。かみちゃんは特に感慨もなさそうに「やっぱり」と呟き、シーツをぱっぱと纏めたら洗濯機に向かっていった。俺は寝ぼけた頭をぽりぽりかきながらそれを見送り、朝飯でも作るかぁ、と動き出す。
「……あ、しげご飯用意してくれたんや」
「うん。かみちゃん確かロケで早いんやろ?」
「そうね、まぁ大したことないけど…⋯いただきまぁす」
 俺が適当に作った簡単な朝食でも、育ちのいいこの子は毎回ちゃんと「おいしい」と笑ってくれる。今日は夕方に入ってる仕事のみの俺は二度寝でもしようかなぁ、なんて考えながら目の前の、結局何であろうがかわいい恋人をじっと見つめた。
「……体調、どう? おかしいとことかない?」
「んー、ないなぁ……あ、でもなんか、一日無い状態やったからか、すごい邪魔に感じるわ。なんやねんこれ、もう何年もトイレにしか使ってへんのに」
「おい食事中やぞ!」
「なはは、ごめんごめん。でもむしろいい体験なったんちゃう? 女の子が実際どこが気持ちぃんかとか、分かったし」
「えっ……………」
「使う予定はないけどな」
「〜〜〜〜〜〜ッッッほんッッま、やめろってそういうの! 心臓に悪いから!!」
「ははは! でもほら、そうじゃなくてもさ、逆がないとも限らんやん」
「逆?」
「そう、逆」
「…………ッエェ!!?」
 大袈裟に仰け反った俺を見てにんまり目を細め、口端をぺろりと舐めながらかみちゃんはわらった。
「いつもは譲ったってるけど、そん時ばっかりは俺が上やんなぁ? 楽しみにしとき、天国見したるから」
「………は、はひ…!」
 お、おれのカレシ、かっっっ……けぇ……!




●その後約一ヶ月彼は毎朝律儀に股間を確認しましたが、ちんちんが消えることはありませんでした

 (^ワ^=)「なんかちょっと残念」


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