人質と会話

かくして捕らえられた伊達の兵達がやってきた。体をきつく縄で縛られ目を回している。風魔殿、なかなか手荒いな。
それにしても、奇抜な髪型だ。


「、う、うぅん、……ひぃっ!」
「暴れないで、じっとしていて下さい。包帯が緩んでしまう。」
「あ、あんたぁ、あの黒い忍びの仲間、か……?」
「ええ、そうです、今は。」
「な、なっ、何で手当てなんかしてやがる!?」

離しやがれぇ、と手足を縛られている状態で暴れ出す兵士。
私の元に彼らを連れてきた松永軍の兵士は、人取橋の最奥地に捕虜を柱に縛り付けに行きましょう、手はずは整えておりますと言った。あの人の言った世話とはこれのことか。
しかし、傷付いた人質をそのままにして置くのは忍びない。急がねば、と急かす自軍の者を説得し、手当てを施すと決めた。
他の兵士らは気絶している間にもう手当てを終えて、連れていかれた。最後の一人だというのに、途中で起きてしまうとは困った。

「……人質は手厚くもてなせ、と命じられていますゆえ。貴方、腹の傷を放置したままでは死にますよ。」
「ぐぅ、い、言われてみれば、スゲエ腹が痛え…。」

脅すような形となってしまったが仕方ない。
大人しくなった兵士に手当てを再開する。

「……俺らをどうする気なんだ?あんたらの目的は何なんだ?」
「……。」
「な、なんか話せや、コラァ!」
「……。」
「お、おい。」
「貴方はどうなりたい?」

私が軽々しく久秀様の目的など語れる訳が無い。それに、この人達がこれからどうなるかは私にも分からない。それならば、と思い聞いたら兵士はポカンと口を開け間抜けな声を出した。

「俺が、どうなりたい、か…?」
「仮に貴方の主が助けに来たとして、貴方はどうなりたい?」
「、筆頭なら、絶対助けに来てくれる、仮にじゃねえ!お前らなんか直ぐにっ…。」
「貴方は、助けられたいのですね。…たとえ、それで主が傷付いたとしても?」
「筆頭が、傷付く…?」
「……話はここまでです、行きますよ。」

兵士の足の縄を解き立たせる。顔を顰めながらもそれに従うこの人は、喉から押し出したような声で言った。

「たとえそうなっても、それでも、助けに来るお人なんだよっ、筆頭はよぉ…。」

苦しささえ感じるような声に、眉をひそめる。あの人が仕え、この人が信じる独眼竜。
主君が傷付きながらも自分を助けようとする様を、見ている事しか出来なくなるであろうこの人。その舞台へ導こうとする私。
正気の沙汰と思えない皮肉だ、あの日の私を、私が作ろうとしている。首に何か巻きついているのでは、と思うほど息がしづらい。だが、久秀様の命令だ。従わねば。

独眼竜、一体、どんな人なのだろうか。来たる時が迫って来る感覚。私はどう動けばいい、独眼竜が来るなら右目も付いて来る。
恩を仇で返してしまうことになる、いや、これは彼と出会った時、既に分かりきっていたことだ。
奪われに、やって来るのだ。







ALICE+