右目と出会う

「あの、お助け下さり、ありがとうございました。」
と目の前の男に頭を下げた。
「いや、そんなに大した事はしてない。」だから頭をあげてくれ、と言われそれに従う。少し心配の色を滲ませて自分を見る男に、怪我は無いことを伝えると安心したように頷いた。

私を助けたのは偶然ここを通りかかったからとか、そういう訳ではなく、輩が若い娘を連れて行ったと、近くで見ていたらしい店主に言われ追いかけてきたらしい。
人に言われて助けに来たとは、見かけによらずお人好しらしい。



それにしても、だ。一体この男は何者だろうか。先の輩を沈めたときの身のこなしは、相当な手練れの者だ。平民とは到底思えない。ならば武士か。先の話しからして城下の者からの信頼もある、ということか。ならば伊達の家臣の線も強い、と。上手くいけば詳しい情報を得られるかもしれない。しかし万が一、自分の正体が知られれば警戒が強まってしまう。


助けに来てくれた相手にこれとは、我ながら呆れる。
初めて出逢った相手を色々勘ぐってしまうのは、もはや癖となってしまった。
あれこれ相手について思案していると、声をかけられた。
「これから、何処へ行く。」
「え、ああ、城下の町へですが、」
「そうか。ここらは治安が悪い。俺もこれから町へ行くんだが、共に行くか。」
「、ええ、お願いします。」

そういうことになった。




「...あの、まだ名乗っていませんでした。私、小百合といいます。」
「......、景綱だ。」

お互い、何ともぎこちない名乗りであった。


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