うちは忍者3
閑話
生前父は、困難は自分の手で切り開け、と言った。私は尊敬する父の教え通りにしようと決意して、その日から体術を一所懸命頑張った。自分の拳で敵を倒すのだ。違う、そうじゃない…という声が聞こえてきたが気のせいだろう。
しかし自分の拳一つで戦うとなると、戦場ではなかなかに厳しいことではないだろうか、と幼き日の私は考えた。印を結んで術で相手を倒す事は有りなのか、無しなのか…。自分の手、というからには何と無く直接的な感じの方がそれっぽい気がする。印では間接的だものな。その当時、私にとって術=火遁の式が成り立っており、手を媒介として発動するその他諸々の術を知らなかった。
父は手で、と言っていた。口ではない。
結論を出した私は武具を捨てると共に術の稽古を辞めた。
「だから私は丸腰で戦っていたんだ。」
「それはおかしいだろう。」
うちはと千手の長く続いた戦が終わり、信じられないことにうちはの宿敵扉間と世間話する時代になった頃、扉間は私が何故戦場で丸腰だったのか訊いてきた。
とっても丁寧に教えてやったというのに、こいつときたら…。いつもこいつは否定する事から入るのだ。それでは大成しないだろうな、残念な奴め。
「マダラのやつは何も言わなかったのか?彼奴なら幻術かけてでも止めそうなものを…。」
「頭領には止められた。ついでに言うとイズナにも止められた。」
「...それで、お前はどうしたんだ?」
「泣き落としでどうにかなった。」
ま、頭領の側にいるという条件付きだったがな。そう言うと、扉間は驚いたようにこちらを見た。
「む、何だ?」
「お前…、お前はそんな理由で戦場でマダラの側に居たのか{emj_ip_0793}」
「ああ、そうだが?」
扉間は今度は言葉を失ったように閉口した。そして、声を潜めて最後は溜息交じりに言った。
「てっきり俺は、というより千手は、お前に相当な力があるのだとばかり…。」
「私は強いが?」
「その意味で無くっ、権力的な意味でだ!」
「うわ、急に声を荒げるなよ。因みに、権力だけで言えば中の上か上の下くらいだったかな。まぁ、もう終わった話だ。問題ないだろう。」
「問題有、…いや、無いが。」
そうか、私は結構な権力者だと思われていたのか。実際は違うのだが、いい気分だ。別に権力が無くたって拳でどうにかしてきたが。それにしても……。
上の下か、ぎりぎりいける、か?いややはり無理だ、計画が…、などとブツブツ言う扉間は正直気持ち悪い。白けた目でじぃと見ていると、それに気付いた扉間は咳払いをした。
「ともかく、その話他の者には絶対に言うなよ。」
「なんで?」
「なんでもだ。」
「フリではなくて?」
「、フリではなくて、だ。」
仕方ないな、貸し一つだぞ。そう言うと扉間は眉を寄せながら如何にも渋々といった感じで頷いた。よし、日頃の恨みを込めて何か恥ずかし事をさせよう。
この時の会話をもっと追及するべきだったと後悔するのは、もう少し後の話である。
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