うちは忍者4

死人に口あり


目の前で眠っているようにも見える女。普段があれだけ煩い奴だったからか、静かにしていることに違和感を感じて仕方ない。

里抜けを火影である自分の前で堂々と発言したサユリに、こなせる範囲内の多さで任務を与えた。あいつの性格は熟知している、責任感が無駄に厚いあいつは任務があるうちは出て行かないだろう、と。

しかしそれにしても帰りが遅い、と思っていたところにサユリの僅かな気配を感知した。あいつに付けていたマーキングにより、そこに飛ぶ。目を見開いた。
あいつは倒れていた。虫の息とはまさに、という状態であった。しかしまだ息がある。
近くにより容態を確かめようとすると、サユリは掠れた声を発した。
その内容に思わず顔をしかめた。こんな時までお前は、と。何時もの調子で言い返そうとして、気づく。息が、無い。
文句の一つも言えなくなった。言い逃げとは、こいつらしくもない。頭の中では理解した、目の前の死を。それを納得出来るかは別としてだが。

動かないサユリを抱き上げる。飛雷神の術で、飛んだ。

自室の寝台にサユリを横たわらせた。
首を触る。冷たい。こいつの何時もの体温など知るはずもないが、きっと、もっと温かかったのだろう。触って確認しても尚、身近なものの死に慣れ過ぎた自分の目からは涙など一滴も出なかった。
しかし。
駄目だ、耐えられない。
死んだこいつを、動かないこいつを見るのは、耐えられない。
我ながら、溜息がでる。火影がこんな事でどうするか。マダラが里を抜け、その後病にかかり弱体化した兄者に代わり、自分が里を守らねばならない。
頭が嫌でも冴えてくる、しかし、同時に何かが淀んでいく感覚が、自分から賢明さを奪っていくのを実感した。それに抗える気がしなかった。

頭の中を占める考えに、我ながら失笑する。
最近開発しだした死者の魂を呼び戻す術。未完成ではあるが、大方出来上がっているものだ。人道からは外れていても忍として、大いに利用できる可能性がある術だが、これは敵に使用するつもりでいたのだ。
それを戦い以外の、里の為以外の目的でしようとしている。何が問題か、その全てを理解している上で実行しようとしているのだから救いようがない。

思えば、こいつが関わると全く自分らしく居られない。それは昔からで、悪いといえばワシを狂わせるこいつである。まったく、意味のない責任転嫁でもして無理矢理にでも理屈付けなければ、やってられない。悪いな。

そして、サユリの死を無かったことにした。



「あれ?私は死んだと思ったのだが、違ったのか?父が迎えに来た気がしたのに。」
「気のせいじゃない、お前は死んだ。ついさっきな。」
「げっ、扉間…!」
「……死んでも、相変わらずのようで安心した。」

本当に。

「如何して私は死んだのに、生きているんだ?はっ、まさかお前が{emj_ip_0793}」
「あぁ、予てより開発していた穢土転生の術だ。簡単に言えば死者の魂を口寄せする術、か。」
「な、なんて陰湿な術を…。だが、お前らしいといえばお前らしいな。驚きはしない。」

陰湿は余計だ。変なところで納得されても有難くもなんともないのだが。
そうだ、サユリの任務中に何が起きたのかを聞かねば。

「おい、任務中に何があった?お前が命を落とす程のものでは無かった筈だ。」
「お、おう。こんな時まで冷静なんだな、お前。こっちは結構、それどころじゃ無いんだが?あ、でも混乱しすぎて逆に落ち着いてきたかも。」
「なら問題ないな。火影として聞かんわけにはいかんだろう、それにお前以外答えられる者も居らんしな。」
「あー、確かに、それもそうだな。仕方ないから教えてやる。あれは、お前が寄越した鬼畜の所業の如き量の任務を、スマートかつダイナミックにこなした後のことだ……。」

余計な自画自賛を話の合間に入れつつ、素直に話すこいつは、あのうちは一族とは思えない程単純な思考回路をしている。此方としては丸め込め易く助かるので、指摘はしてこなかったが、こうも素直だと忍者として心配になる。これで敵には情報を漏らしたことが無いのだから、不思議である。

「つまり、任務後チャクラ切れのところに敵に遭遇し、苦戦しながらも相打ちにもちこみ命からがら里に戻ってきたが、駄目だったと。」
「だ、ダメとかいうな!お前だって対処に悩んでいた奴らだったんだからな、感謝して欲しいくらいだ。」
「ああ、すまん。つい、な。しかし、そうか…、あの集団と……。」

兄者の代から難儀していた奴らである。話し合いでどうにかなる奴らでは無いというのに兄者ときたら、成る可く穏便になど、と。マダラの件や火影の引き継ぎもあり、後回しにした結果がこれ、か。
やはり、後手に回っていては付け入られるのだ。己の至らなさを実感した。これまで以上に先手を取らねば、何事も。

「……扉間?」
「そうだな、全てわしの招いた結果だ。お前には悪いことをした。」
「扉間……。っらしくないないな。私だって忍者だぞ。それに里の為になったなら…、まぁ…、構わないさ。」
「いや、わしは構う。お前を死なせてしまった責任は取ろう。予定通り結婚だ。」
「いやいや、折角かっこつけて言ったんだから、そこは構う、な、……最後何言った?」
「責任を取ってお前の面倒を見てやる、と言った。穢土転生は公にしていない極秘の術だからな、探られでもしたら事だ。目立った行動は控えて欲しい。式は挙げんが、構わんな?」
「構うわっ!一瞬違うかも、と思ったけどやっぱり結婚だった!うわー、うわー!」

さて、騒ぎ出したこいつをどう丸め込むか。そう難しいことでは無いのは此れまでの経験からして明らかだ。

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