「みんなそろそろ終電だろ?」
店の壁掛け時計を指さす澤本くんに「うおいっ!」って飛び上がった。
「雨すっげぇ降ってるからタクシー呼ぶ?」
「いらない、いらない!夏輝、言うの遅い!今日の分もつけといて!」
「はいよ。」
ゆき乃さんの幼馴染だっていう澤本くんのお店が、あたし達の溜まり場だった。
慌ててコートを羽織ってガラガラ…ドアを開けるとバケツをひっくり返したような大雨。
「げろ、なんだこれ。スコール?嵐?なにこのレベル!」
三人とも思わず足が竦むと、澤本くんが後ろから「やっぱりタクシー呼ぶ?」ゆき乃さんの肩に手を置いてそう聞いた。
「…いい。走る!行くよっ、えみ、美月っ!」
「えっ!?」
顔を見合わせるあたしとえみさんを置いてゆき乃さんは男前にコートを頭のところまでかけて走り出した。
五秒で全身ずぶ濡れゆき乃さんに続くしかない。
よかった、お気に入りの靴じゃなくって、なぁんて。
「原田、続きます!」
一気に数メートル先の軒下へ。たかが数メートル、されど数メートル。
体力前回の学生とは訳が違う。
アラサー女の全力疾走なんてたかが知れてる。
「びしょびしょー!!!」
軒下で足踏みしてるゆき乃さんの隣に行くと。あたしに続いてえみさん。
その後ろ、どっから来たのか、若者が二人、同じように軒下に入り込んだ。
思わずジッと見ちゃったのはなんていうかどっちも美形で。
「ゆき乃さん、ゆき乃さん、タイプ?」
クイクイってタオルでパタパタ全身を拭いているゆき乃さんに小さく耳打ちした。
でも雨で全然声が届かなくて、こっちを見て小首を傾げたゆき乃さんの視線があたしの後ろに移る。
「爆イケ!!!モデル?」
大声で話しかけてる!!
「え?違うけど。」
長身の金髪が不審そうに答えるも、ゆき乃さんはひょこひょこそっちに歩いて行って。
「夏輝の飲み屋にいた?もしかして。」
「あーいました。夏輝くんも知ってます。いましたよね?お姉さん達も。」
金髪の横、天パの赤髪が笑顔で答えた。
途端にあたしの心臓がズキュンって音を立てる。