「あれ?ご機嫌ななめ?」
ポンッて北人さんが俺の肩に触れる。その顔は俺とは大違いで楽しそう。
ここんとこバタバタ旅行準備をしていたっぽいゆき乃さん。なんだろ?って思ったら今日は直人さんのイベントでグランピングに着いていってるらしい。
俺に一言も連絡すら来なかった。俺って彼氏だよね?そりゃ二番目だけど。小さく溜息をついて目を逸らす。
「あーそういやゆき乃さんグランピングって言ってたな。もしかして、今日だったの?」
北人さんの言葉にコクって頷くとポンッて北人さんの手が髪をクシャってした。
「お前ー分かりやすいなぁ。そんなんじゃ俺じゃなくてもバレるよ?」
「この前壱馬さんにバレました。」
「えっ!?壱馬?」
「...一緒にいるとこ見られて。」
「壱馬でよかったね。三代目メンバーさんに見られないようにしなよ、樹。」
俺とゆき乃さんの関係を唯一知っている北人さんは、こうしてちょこちょこと俺達の事を心配してくれている。だからつい北人さんには甘えたくなっちゃうわけで。
「今頃直人さんとイチャイチャしてるんすかね、」
想像もしたくない。仕事とはいえ、ゆき乃さん連れてっちゃう直人さんは、やっぱり将来ゆき乃さんにプロポーズとかするんだろうか?二人は年も近いし、俺ってやっぱり捨てられる?
「仕事でしょ。てかスタッフさんも知らないだろーし、至って普通に接してるでしょ。」
「ゆき乃さん、何も言わずに行っちゃうんですよ。結構酷くないですか?俺だってもうすぐライブなのに。」