好きになったきっかけがどれかなんて正直覚えてない。
でも気づくとその後ろ姿を目で追っていて、あなたの声だけが耳に鮮明に入ってくるようになっていた。
コンコンってノックの後、ガチャリとドアが開くと、隙間から顔を覗かせた。
「健二郎くん、見なかった?」
ウグイス嬢なんかよりも遥かに綺麗なソプラノボイスがジムの中に響いた。キョロキョロと辺りを見回して小さく溜息。
「見てないっす。」
「僕も、見てないです。」
メンバーみんなが答えていく中、俺はバチッと目が合って思わず逸らした。
「健二郎くん見たら私が探してるって言っといて!」
「はい!」
「海青の腕、いつかぶら下がりたい、」
お茶目にそう言うと海青がニンマリ笑って「いいっすよ、いつでも!」なんて得意げに腕を上げた。パァって目を輝かせて海青の腕を掴むとその腕を海青が高々と上げた。
「ギャッ!」
そんなこもった声と、バタンって音。
「酷い、落とすなんて!」
「すいません、」
いや今自分から落ちたよね?無意識で俺の足はそこに駆けていて、「大丈夫ですか?」口をついで出た心配の声に、あなたはニッコリ微笑んで「いっちゃんに心配させたかったのー!大成功!」なんて笑うんだ。
...俺のため?いや、俺のせい?
ふわって俺の腕を掴んで「いっちゃんにもぶら下がりたいって言ってんのにー。」ぷーって軽く唇を尖らせて頬を膨らませるその仕草に身体中の血液が顔に集中するのが分かった。
...最悪。なにその顔。ダメだと思った。この人には絶対勝てないって。
「いっちゃん真っ赤。可愛いなー。」
髪を撫でたりしないで。そんな愛おしそうな顔して、触れないでよ頼むから。