樹の所に行ってあげたいのは山々だったけど、ちょうどこの後ファンタがメンバー会議で集まっていたから大樹と世界について私も会議に顔を出した。当の本人、翔太も来ていてポンと大樹が翔太の肩に一つ手を置くと安心したように笑うんだ。
「ゆき乃さんも一緒ですか?」
嬉しそうな夏喜の顔に小さく頷くと八重歯を見せてはにかんだ。メンバー会議が終わりを見せる頃、大樹と世界がゴクッと唾を飲み込んだのが分かった。だけど。
「あの僕から言わせてください。」
言ったのは翔太で。メンバーが不思議そうな顔でそんな翔太を見ている。
強い子だね。
ふう...と一つ息を吐き出した翔太は、その病名を自分の口からメンバーに伝えたんだ。
嘘だろ?って顔のメンバーは誰も口を開かなくて。
「俺たちは翔太を信じて全力で支えるから必ず戻ってきて9人で元気な姿をみんなに見せるんだ。」
「私も信じてる。でも辛い時は辛いって言ってほしい。一人で頑張ることないから。メンバーの前では素直でいて、ね?」
「はい。ありがとうございます。そんな悲しそうな顔しないでほしい。俺、すぐ戻ってきますよ!」
笑顔の翔太にみんなが笑う。「大丈夫!」「絶対に勝つ!」と。どうかこの子達の夢を叶えてほしい。何も奪わないでほしい、そんな風に願うしかできないけど。
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「夏喜。一緒に帰る?」
ポンと大きな背中に手を添えるとビクッと振り返った。スタジオにこもってずーっとレッスンをしていた夏喜にそう声をかけると困ったように微笑む。
「待っててくれたんですか?」
「泣きそうに見えたから。」
身長180センチ超の夏喜の頭を背伸びしてポンポンって叩くとやっぱり泣きそうな顔して目を逸らした。ペタンってその場にしゃがんで項垂れる夏喜。
「情けないです。翔太くんが元気なのに俺のが弱気で。想像もしてなかった。」
「翔太の前で見せなければいいよ。誰だって怖いよ。」
「...ゆき乃、」
キュッと私の手を握る夏喜をふわりと抱き寄せた。コテってされるがままに頭を私の肩に預ける夏喜の背中に腕を回すと「...ゆき乃さん絶対抱き心地良さそう。」なんて言うんだ。
「そんなこと言えるなら大丈夫よ。」
「でも今日は一人になりたくない。」
「うん。私も、一人にしたくない、夏喜のこと。」
「...もう我慢しない、俺。」
目の前で夏喜の顔が小さく揺れた。