「やっと誘いにのってくれた。」
嬉しそうな笑みを浮かべる亜嵐につられて笑う。そんな風に喜んでくれることは単純に嬉しいわけで。
「ご飯ぐらいなら、いつでも。」
「あ、これうま!ね、食べてみて、えみさんも!」
まるで子供みたいにはしゃいで箸で掴んだ肉を私の口元に差し出した。そのままパクつくと口内に味が染み渡ってなんていうか、ほっぺたが落ちそうになる。思わず頬に手を添えて笑うと目が合った亜嵐は静かに視線を逸らした。
「ん?」そう首を傾げるとまた照れたように目を逸らす。
「亜嵐?」
「うん。、真面目な話してもいいですか?」
「え、あ、うん。どうぞ。」
キョトンと亜嵐を見つめ返すとキュっと、テーブルの上、手を握られた。容易に想像できる次の展開。
「彼氏、いますか?」
やっぱりな亜嵐の言葉に胸の奥がキュンと痛む。
「いるよ。」
そんな素振り見せなかったからか、私の回答に驚いた顔の亜嵐。苦笑いで「いたんだ。」って。
「言えない人、だから。」
「...岩さん、ですか?」
「言えないって、」
「なんとなく二人の醸し出す空気が人と違うことぐらいは分かってました。けど、」
そこまで言うと亜嵐はまだジョッキに残っていたレモンサワーを一気に飲み干した。それからクッと顔を上げて真っ直ぐに私を見る。
「それでも僕、えみさんが欲しい!」
こんな告白あるだろうか?欲しい、なんて。遠い昔、忘れていた熱情がどこからか蘇ってくるような感覚だった。
不意に浮かんだゆき乃さんの顔。こんな気持ちであの子達を相手しているんだろうと。
こんなにも胸が熱くキュンキュンするなんて。
「私、おいしくないかもよ?」
ちょっと笑いながらそう聞くと亜嵐も笑って手を強く握りしめる。
「俺、」
指折り数えながら「色んな調味料持ってるから!」...変な告白、なんて思いながらも、始まりはみんなこんなもんなんだろうって。
たった一歩、踏み出せなかった一歩を、一緒に踏み出して堕ちる所まで一緒に堕ちてくれるオミがいるから、私は亜嵐を受け入れたんだ。