樹か北ちゃんかどっちにしようか迷っていたらピンポーン…呼び鈴が鳴った。ドキっとしてドアを開けると樹を肩で抱えた北ちゃんが苦笑いで立っている。
「潰れたから連れてきた。ゆき乃さんに逢いたい、逢いたい、うるせぇの。俺だって思ってるのに…口に出して言っちゃう樹ってちょっとずるくない?」
頬を膨らませてそう言う北ちゃんが殺人級に可愛くて、樹と反対側の腕にギュっと抱きついた。
「どうしたの?なんかあった?」
甘い北ちゃんの声が心地良い。肩に顔を埋めて「何もないよ。でも逢いたかったから、嬉しい。えみさん帰って一人でちょっと寂しくて...。」...私の言葉に北ちゃんは顔をずらして髪に小さくキスをする。
「あー樹邪魔。そーいう弱さ、俺にだけ見せてくれるゆき乃が、可愛いくて仕方ないんだけど。」
「北ちゃん好き。」
「...あーもう、ちょっと待って。樹ベッドに運ぶ。ゆき乃さんも手伝って。」
完全に潰れて眠っている樹を、ベッドにそっと置くと北ちゃんの温もりに包まれた。ぎゅうって強く抱きしめる北ちゃんに巻き付くと「樹置いて帰ろうと思ったけど、帰れねぇじゃん。」胸が痛くなるような切ない声でそう言ったんだ。
いつだって北ちゃんは私の気持ちを先回りして分かってくれていると思っていたけど、本当の本当は分かったフリをしてくれていただけなんじゃないかって、今更思う。
誰かが北ちゃんみたいに分かって受け入れてくれていなきゃこの関係は絶対に成り立たない。
「帰らないで、北ちゃん。」
私の言葉に、泣きそうな顔で、嬉しそうに微笑んだんだ。