翌朝目が覚めた樹は、二日酔いにもならずスッキリした顔で、隣で眠っている北ちゃんを見て変な声を上げた。
「北人さんありえない。」
「さっきからそればっか。お前をここまで運んでやったんだから感謝してよ?」
「......けど、ゆき乃さんのベッドで寝なくてもよくないですか?」
「いっちゃん!今度はシラフの時にきてよ。」
ブー垂れた顔の樹の頭にポンッと手を乗せてそう言うと、すぐにニカッて笑う。
「うん。」
「現金なヤツ。」
北ちゃんが呆れたようにそう言う。
「朝ご飯出来てるから3人で食べよ?」
「あ、俺手伝う!」
北ちゃんが隣でパンにバターを塗ってくれる。ウインナーを焼いてスクランブルエッグを添えて、ケチャップといちごジャム。
「珈琲と紅茶どっちがいい?」
まだボーッとしている樹に聞くと「珈琲。...北人さん、この部屋来たことないですね?」...え!?ドキッとするような樹の言葉に北ちゃんはニッコリ微笑んだ。
「さぁ、どーだろ?」
余裕の笑み。それから一瞬だけチラリと私を見ると、視線を樹に戻して続けた。
「俺、樹より前からゆき乃さんと付き合ってるからねぇ!」
...え、北ちゃん?本気?だって固まってる樹と私、同じ顔してる。だけど、
「んなわけないでしょ!俺、髪長い人が好きだもん。」
前下りなおかっぱな私とは大違いなタイプで。
「...冗談がすぎますよ、北人さん。俺北人さんがライバルとか絶対嫌なんで。今後もゆき乃さんのこと好きにならないでくださいね?」
「ならない、ならない。」
ブンブン首を振る北ちゃんに、私の心境は複雑だった。
「はぁ...。」
一体全体本日何度目だろうか、この溜息。スマホには夏喜からの自撮りが毎日届く。モバイルにはたいして載せないくせに毎日自撮りする夏喜をちょっと可愛く思ってしまう私。
付き合いたての頃の直人もよく自撮り画像くれたっけな、なんて懐かしく思えるくらいに。
「ゆき乃さーん、今日は元気ないですね?いっちゃんと何かありました?それとも、直人さん?」
ご機嫌なマイコの薬指にはまこっちゃんに貰ったのか、壱馬に貰ったのか、指輪がキラリと輝いている。私も直人と付き合っていながら北ちゃんに告白された後、あんなにキラキラしてたっけ?やばいな、今の私絶不調。絶対ブスだよ…。
「ないよ、なんも。」