右手に煙草、左手にブラックコーヒーでマイコに乾いた笑いを飛ばす。直人は新曲の作成で今忙しい。アパレルの方もやりつつだし、バラエティーの撮りもアルバムのジャケの撮影もこれから沢山だ。北ちゃんも樹もツアーで地方に行っていて…寂しいのかな、私ってば。
「分かった!いっちゃんも直人さんもいなから寂しいんだ?」
「…かも。」
「えっ!?どうしたの?ゆき乃さんらしくない…。」
心配そうに見つめるマイコに苦笑い。私らしいって、どんな顔?自分がどんな顔をしていたのかも、今は思い出せないや。
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「うま。」
「よかった。外食でもよかったんだけど、気疲れしそうで…。」
そう言って眉毛を下げた私に夏喜の手が止まった。ふわりと伸びてくる大きな手がポンポンって頭を撫でる。…―――え?なに?
「夏喜?」
「うん?」
「なに?」
「…だってゆき乃さん泣きそう。俺がいるのにそんな悲しそうな顔、させたくない。」
泣きそう?私が?夏喜に言われて自分がもしかしたら泣きたかったのかな?なんて思う。こういう時、北ちゃんはいつも気づいて抱きしめてくれていた。私の些細な変化に気付けるのはこの世でたった一人、北ちゃんだけなんじゃないかって思えるほどに。
「夏喜も、気付いちゃうんだ。」
「…俺、ゆき乃さんのこと好きです。」
どうしたの、今更…首を傾げた瞬間、涙がポロっと頬を伝ったなんて。途端に夏喜がガタっと椅子を鳴らして立ち上がると、私の横に来てギュっと大きな身体で包み込む。
「泣いてもいいですよ、俺の前では。もどかしい気持ち、何も我慢しないで、全部吐き出していいですよ。一人でたってるの苦しいでしょ?俺も、そういう時はあります。意味もなく無性に泣きたくなってしまう時。でも男だし、泣く場所もなかったから。だからね、ゆき乃さん、一人で頑張らないで、いつでも泣きたい時は俺を呼んで?気のすむまでこうしてあげるから…。」
何も知らないと思っていたけど、もしかしたら夏喜は北ちゃんみたいに全部を知っているのかもしれないなんて頭の片隅を過ぎったんだ。なんともいえない気持ちを吐き出させてくれる泣ける場所があることが、どれだけ幸せなのか、思い知った。