右手の薬指4


「樹さん!」
「こんばんは。」
「樹くん、一人?」
「はい。二人は暖かそうっすね。」


軽く笑うと真っ赤になったのはマイコさんの方。いやいやこれ相当わかりやすいなぁ。まこっちゃん大丈夫かよ。


「飲んでたんですか?」
「うん。陣さんとリキヤさんと。」
「珍しいっすね。」
「まぁちょっと色々相談が。あの、聞いてもいいですか?」


まこっちゃんを通り越してマイコさんに話しかけると「え、私?」ちょっと吃驚した表情でコクっと頷く。


「右手の薬指の指輪って、女の人にとってどんだけ大事、ですか?」
「え、どういう意味?え、」


あきらかに動揺しているけど、大丈夫だよ、あなた達の事じゃないから、なんて言わないけど。


「樹さん、え、指輪?」
「うん。やっぱり恋人から貰ったら薬指?」
「...えーっと、それはその、」
「一般論ですよ、一般論。」
「あ、なるほど、そっか。一般論ならそうかな。好きな人や恋人から貰ったら薬指につけるのが普通なんじゃないかな?」


はぁーやっぱりか。


「けどゆき乃さんとかは、ご褒美に買った!とかよく言ってるし、そーいうのもあると思うよ?」
「え?」


不意に出てきたゆき乃さんって名前に思わず心拍数が上がる。


「え、あの指輪、自分で買ったの?」
「ゆき乃さんね。でも分かんない。正直ゆき乃さんの趣味っぽくはないし。クリスマスだったし、なーんてそんなこと言ったら怒られるか。」


...いや言ってよもっと。むしろ教えてよ、それ全部!

なんてことは言えず、苦笑いする俺を不思議そうな顔して見ていた。

けど一つだけ、一番知りたかったのは、ゆき乃さんの右手の薬指にあるゴールドの指輪。それがマイコさんの言う通り、自分へのご褒美に買ったものだと、俺は信じたい。



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「飲み過ぎたぁー気持ち悪いぃーうえーん誰か助けてぇー。」


社内にある喫煙スペースで珈琲片手にぐったりしているゆき乃さんに思わず顔が笑う。

ジムに通いながらも、こうしてどこかでゆき乃さんに逢えることを期待して毎夜顔を出していた。

今日もその指にはキラリと光る指輪が大事そうについている。

つーかあの人何時まで飲んでたんだ?もう夜だけど。

煙草なんて吸わないからプロテインだけ飲みながら俺がその前を通り過ぎようとしたら「樹!」呼び止められた。

って、呼び捨てとか、やめろよ。





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