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「喉、痛い…。」
ライブが続いてハードなスケジュールをこなしていく中、すこぶる北ちゃんの調子が悪かった。
隆二みたいに繊細な北ちゃんはここ最近喉の調子が本調子じゃない。
「大丈夫?」
それでも私がそう聞けば「うん。」って小さく微笑むんだ。
「無理しないの。今日うち来る?」
「え、いいの?」
吃驚した顔だったのはそう、今日は三代目との打ち合わせがあるから、きっと直人と過ごすんだろうって思っていたからだろうか。
「直人さんは今日は来ないから。」
別に約束したわけじゃないし、そんなに頻繁に泊まりに来ることもない。
大人の付き合いなんてそんなもんだ。
「行く。ゆき乃さんのお っ ぱ い触りたかったんだよねぇ。」
わざと下ネタを言うのは照れ隠しなのか、本当に触りたかったのか。
「ケアするんだからねー。えっちなこと考えても無駄だからね。」
「なんで?えっちな事しか浮かばないんだけど俺。」
「全国の吉野北人のファンが聞いたら泣くよーそれ。」
クスって笑って北ちゃんを振り返ると何故か真剣な顔をしていて。
思わず立ち止まって首を傾げた私の腕をそっと掴んだんだ。
「北ちゃん?」
「ファンの子は大事だけど、ゆき乃が一番大事なんだけど、俺。」
いつもわりとふざけてる北ちゃんらしからぬ言葉にキョトンと見上げた。
「ゆき乃さんは、直人さんと結婚するの?」
「…え?結婚?そんな話出てないし、」
「じゃあ俺を選んでよ。」
気づくと北ちゃんの腕の中で。まだここがリハーサル室でいつ誰が戻ってくるか分からないっていうのに腕を緩めない北ちゃん。
「ずっと二人でいたい。本当は誰にも触らせたくねぇ。」
「…どう、したの?」
「口に出さないだけでずっと思ってたよ。」
知らないそんなの。北ちゃんがそんな真剣なこと思ってたなんて、全然知らない。
「嫌われたくないんだよ、これでも。困らせて嫌われたらどーしよう?って。」
「北ちゃん、」
「…とにかくそう思ってるから。ゆき乃さんが一番大事だって。」
…樹に続いて北ちゃんまでも、胸が痛くて涙が溢れてしまう言葉をくれるなんて。
だけどやっぱり心がモヤモヤするのは、欲しい人じゃないからなんだろうか。
いい加減気づかなきゃだめだよね。