一生一番5


「ねー。」
「ふふ、こーら。」
「ねー、いーじゃん。」
「だーめ。」
「なんでよー。」


私の部屋に上がり込むなり後ろからギューって抱きついている北ちゃん。

こんなに甘てくるのは珍しくて。

喉、本当に苦しそうだから私ができる範囲での最大限のケアをしてあげたいと思ってるけど、お気に召さない様子。


「喉、痛いんでしょ?」
「ちょっとだけ、」
「じゃあわかった、とりあえずお風呂入るよ。」
「うん!」


結局北ちゃんを甘やかすけど、健康的な男子たるものこれが当然かって。樹がいるといつも北ちゃんに我慢をさせちゃう事も多いから、たまにはこんな我儘北人も受け止めてあげなきゃなんて思う。


「はぁー気持ち。」


背中越しに北ちゃんの声。お っ ぱ いを弄る手は健在。肩に顎を乗せて緩く私を抱いている。


「ゆき乃さん。」
「え?」
「さっきのだけど、」
「…うん。」
「あんまり気にしないで。」


トクンっと胸が脈打つ。思わず振り返るも、北ちゃんは真顔で。

目が合うとちょっとだけ苦笑い。


「今の関係が気に入らないとかじゃなくて、今の関係じゃなきゃ無理だって分かってる。こうやって俺と過ごす時間を作ってくれるのすげえ嬉しいし、多くを望んじゃダメだよね?」


北ちゃんらしからぬ弱気発言にほんのり目を伏せた。

そんな私の頬に手を添える北ちゃんは、ゆっくり顔を近づけて小さなキスを落とす。


「だから一つだけ言っとく。」
「………。」
「もしも直人さんに傷つけられたら、その時は力ずくでもゆき乃さんを奪い取る。樹や夏喜くんをライバルだなんて思ってないから、俺。」


それは、樹も夏喜も怒るわよ!なんて思ったけど、北ちゃんの真剣な気持ちは物凄く伝わった。


「自信あるの?」
「なきゃ手出さないって。」
「…分かった。すごく嬉しい。北ちゃん大好き、」
「はい、キスして、」


目を閉じる北ちゃんの首に腕をかけて唇を重ねた。スイッチオンの北ちゃんは、無駄に色気が出てかっこいいなんてもんじゃない。

この人こんなにオトコだったんだ?ってくらいにオトコな北ちゃんを、私はこの期に及んで誰にも知られたくないなんて我儘を思った。

お風呂場からベッドに身を移した私達は、そのまま思う存分愛し合った。

愛し合った…その言葉が誰より似合うのは北ちゃんだと思う。





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