「…嘘だ。」
誰も何も言えないこの会議室で小さく掠れた夏喜の声が聞こえた。俯いていた顔をあげると、首を横に振って「嘘だ、そんなの嘘だ!!!」夏喜の叫び声に会議室の外にいる他のグループのみんなもこちらに一斉に目を向けた。
力が抜けたように黎弥がその場に崩れ落ちた。その隣で堰を切ったように泣き崩れる慧人。
「翔太くんは戻るっていっ、」
「なっちゃん!!」
「堀夏くんっ!!」
大きな夏喜の身体を目一杯押さえつけたのは、ボーカルの勇征と颯太で。泣き喚く夏喜をギュッと抱きしめる勇征と颯太に悲鳴みたいな夏喜の鳴き声が広がった。
大好きな人の死は、そう簡単に受け入れられない。それでも前を向いて笑顔すら作らないとならないここ芸能界は、すごく残酷な世界なのかもしれない。
明日、ステージに立てるだろうか?
ファンの前でパフォーマンスできるのだろうか?
泣かずにいられるのだろうか?
不安しかなくて、どうしようもない消失感が全てを支配している。
それでも時間は止まってくれない。
夏喜の声でみんな翔太の事を理解したに違いない。物分りのいい大人みたいに静かに泣くみんなを見て胸が痛かった。
残酷な時は止まってはくれず、HIROさんからの報告が終わるとすぐに明日のフェスのリハーサルに入った。
「すいません、心配なのでFANTASTICSにつかせてください。」
三代目付きの自分が初めてHIROさんに頼んで今ここにいる。無言でリハーサルを続けるみんな。心がバラバラだから当たり前に揃う事もなく、それでも時間に追われているリーダーの世界と大樹は、午後になったらMステのリハーサルに移動するしかなくて。
「ゆき乃さん。なっちゃんのこと、お願いします。」
丁寧にそう頭を下げるリーダー2人。
「私にできることも何もないんだけど…。」
泣き喚く夏喜を抱きしめてあげることもできなかった私に、今さら何ができるんだろうって。
「そんなことないです。ただそこにいてくれるだけで、安心できる…ゆき乃さんは俺達にとってそんな存在なんです。弱気になってたら翔太に叱られます。」
大樹の言葉にハッとした。本当だね。怒られるね。
「うん分かった。後は私に任せて。EXILE、行ってらっしゃい。」
若くてもしっかりした芯を持っている世界と大樹は、このグループのリーダーに適しているって、心から思った。