「どうしたの?樹。」
ポンポンって北人さんの手が頭を撫でる、いや、叩く。
ジムで思いっきり身体を動かして汗を出す。ぶっ倒れて肩で呼吸をしていたら上から北人さんが覗いた。
「...今崖の下に落ちてるんでほっといてください。」
「ふぅん、わかった。」
スって向きを変えて歩いて行く北人さんに「ちょっと、冷たいっすよ!」叫んだ。くるりと振り返って笑う北人さんに俺は小さく息を吐き出す。
「告白しようとしたらフラれました。」
飯行こう!って誘ってくれた北人さんにボソッと告げると運ばれてきた肉をクンクン嗅いでいていた北人さんの手から肉がポテッと落っこちる。
「え、告白?」
「正確には言うつもりはなかったんですけど。話の流れで言いかけて、でも別の人が入ってきて止まったというか。」
無言で肉を口に入れた北人さんは、それを飲み込むまで3分もかかった。それから一言「ねぇ誰の事?俺、協力しようか?」優しく言われた。
さすがに陣さんやリキヤさんとは違う反応の北人さんにちょっとだけ安心する。
「北人さん、俺ら今女にうつつを抜かしてる場合じゃないっすよね、ぶっちゃけ。」
「まぁそれはそうだけど。樹はさ、好きな人がいた方が上がるんでしょ、モチベーション。それなら別にいんじゃない?結婚するわけじゃないんだし。そもそも、もう既にその人樹のモチベーション支配してんじゃん。」
ペシって痛くないデコピンに苦笑い。言われて気づく、こんなにも自分の心の中に、ゆき乃さんがいるってことに。
「俺、当てようか、樹の好きな人。」
「え、分かるんすか?」
額に乗せていた手を解いて肩肘ついて北人さんを見上げると、爽やかな笑顔でニヤリと口端を緩ませた。
嫌な笑顔、っすね、それ。無言で北人さんを見つめる俺にその薄い唇を開いた。
「ゆき乃さん。当たり?」
...バレてるけん、
「当たり、すごいっすね。」
「まぁねー。俺以外はわかんないと思うよ?」
「え?」
「樹のこと、よく見てるからね、俺は。」
「...そうっす、か。」
「三代目さん専属だったよね、最近まで。俺、直人さんなんじゃないかってちょっと思ってる。」
全くもって男としても人としても勝ち目なんてないだろう強敵。
「なんで、直人さんですか?」
「地元が一緒だから!仲良いって、この前チラッと聞いた。」
「地元、かぁー。」
どーなんだろ。けどゆき乃さんを想う気持ちでは、負けたくない。