右手の薬指7


北人さんに言われたせいか、その日以降俺はどうにもゆき乃さんと直人さんが話しているのをよく見かけるようになった。...というか、意識してるせいか、言われてみたら一緒にいる事が多いんかな、あの二人...なんて。

相変わらず喫煙スペースでヘビーに煙草を吸うゆき乃さんの右手の薬指にはキラリと光る指輪がついている。

なんとかゆき乃さんと接点を持ちたい!と思っていたその日、チャンスは俺に訪れたんだ。

RAMPAGEのマネージャーが一人インフルエンザにかかって、今日は新曲のMVの大事な撮影日。代わりにゆき乃さんがつくことになった。


「イケメン組はゆくゆくは女と絡ませるMVとかやったら反響すごそーね、RAMPAGEは。」
「まだ早くないですか?」
「ゆくゆくはって。でも陸とか健太あたり、地味に色気あるからちょっとぐらいいけそうだけどねぇ。」


スタッフさんと話してるゆき乃さん。チャンスだと思ったけど全然近寄れねぇ。チラチラ視線を送る俺にゆき乃さんは気づいているんだろうか?それともあえて気付かないふり?どっちにしても相手にはされてないんだろうなって、


「ちょっと一服してきます!」


そう言ってスマホ片手にゆき乃さんが席を立った。気づかれないように後ろを歩いて追いかける俺はそのスマホ画面を見てしまったんだ。


「...誰だよあれ。」


待ち受け画面は、後ろ姿の男だった。あきらかに普通の写真じゃない感じで。

俺には全く似つかわしくない人に思えた。

あそこにいるのがゆき乃さんの男?

見えたのはほんの一瞬だったから誰かなんて分からないけど、自分じゃないことぐらいは判断できた。

廊下の突き当たりを曲がったゆき乃さんを慌てて追いかける俺に、曲がった先、壁に背をつけてゆき乃さんがこっちを睨んだ。


「いっちゃん、どーいうつもり?」


やべぇ、バレた。


「...話し、たくて。ゆき乃さんと。」


素直に言うとゆき乃さんは小さく息を吐き出した。


「そんなに知りたいの?私の恋人。」
「...あの、俺、」
「好きなんて言わないわよね?私のこと。」


見つめるゆき乃さんはあきらかに顔が怒ってる。俺なんかに好かれて面倒だってむしろそう思ってるんじゃないかって。

でもどーしようもないけん、俺だってできるのなら好きだなんて言いたくない。

一歩近づいてゆき乃さんの手首を掴む。ギュッと握るとゆき乃さんが俺を見上げた。





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