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「今時タイムスリップなんて笑えない。そんなのおとぎ話の中でだけじゃないの?ねぇハル。」

優等生のハルを見上げるゆき乃。ファンタジー好きなハルからすればこの現状を受け止めきれているのだろうか?いや、令和の日本ではまずあり得ない。それこそ本物のファンタジーである。

「そうだよ、普通はそうだけど。でも現に今私達はここにいる。ほんの何秒か前までの景色とは違っている。…戻る方法探さないと!!」

こういう時、冷静に判断できるのもハルのいいところなのかもしれない。
ゆき乃は勇征にもう逢えないのだろうか?と不安になっていて、美月は今だ信じられない…という表情でボケッと辺りを見回している。

「そうだ、写真!わたし達写真撮った時にこっちに飛んだよね?もう一回撮ってみょうよ!」

ハルの言葉に美月が手中のスマホを掲げたその時だった――――「誰だ!?」聞こえた声にひいっと3人は身体を寄せ合った。幽霊でもいるかのよう、ぎゅっと目を瞑る3人の背中に「おい、ここで何をしている。」再びそんな声が届いた。

「わ、分かりません。私達令和の日本からきました…」
「レイワだと?嘘をつくな。ここは大正の日本国だ。なぜその様な格好をしている、」

見ると、半々羽織りを着てこっちを見ている青い目の男がそこに佇んでいた。黒く長めの髪を後ろで束ねている。

「わお、イケメン!」
「ちょっとゆき乃!」

ハルにバシっと突っ込まれるど、「ほんとだ!」なんて乗っかる美月に苦笑い。

「嘘はついてません。私達修学旅行の途中でこの藤の花に連れられてここに来たんです。でもそれはたぶん令和の日本のここで。この時代の者ではないと思います。帰りたいけど、帰り方が分からなくて…。」

美月がスマホを見ると、電源が入っておらず画面は真っ暗だった。ハルもゆき乃もスマホを持ち出すものの美月のと同じで電源が入っていない状態だ。
こんなの令和の日本では有り得ない。充電は十分にしてきたし、ほんの数分前までは確かに機能していた。

「お前達の言っている事は理解し兼ねる。とりあえず来い。御館様に報告する。」

そう言われてブルーアイの美男子がこの場から3人を誘導して大きな建物の前まで連れてこられた。
そこは、古き良き日本庭園のようで、砂利の敷き詰められた縁側には大きな池があり、鯉が楽しそうに泳いでいた。
大きな松の木の上には縞模様の羽織を着ている人が座っていて、砂利の引かれた縁側には奇抜な格好の人がわんさかいた。

「おい冨岡、なんだそいつらは。」

筋肉ムキムキの派手な男に目の前に立たれて3人は一歩後ずさる。

「あらあら、冨岡さんてば継子ですか?」
「なぬ!冨岡も等々継子をとったのか?だがしかしここは御館様のお住まい、神聖な場所に連れてくるのはどうかと思うぞ!」
「………継子ではない。藤の花の庭に居たから連れてきた。」

なんだかよく分からない事を話していて3人は目を合わせて苦笑い。

「え、殺される?」

美月の小声にゆき乃が目を大きく見開いて「ぜ、絶対に嫌!もう勇征どこよ、勇征に逢いたい。」泣きそうな顔で想い人を思い浮かべた。

その時だったーーー


「御館様の御成です。」

美しい声と共に奥の部屋から双子を両サイドに侍らせた着物の男がゆっくりと歩いて来た。
鼻から上がピンク色に染まったその人はちょっと怖い。

「ん?柱以外の人が迷い込んでいるのかな?」

けれど、出した声は柔らかく、何だかポーっとしてしまいそうだった。





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