ゆき乃がハルの脇腹を軽く小突くと、ハルがハッとしたように口を開いた。
「…信じて貰えないかもしれませんが、大正、昭和、平成、令和…と続く令和の日本で生きています。高校の修学旅行の途中で、京都の神社の中にある藤の花を見ていたらここに迷い込みました。…あの、元の世界に戻りたいです!戻る方法分かりませんか!?」
声を荒げたハルに、「誰がんな話信じるんだァ?」横から聞こえた声に視線を向けると銀髪の傷だらけの男が鋭い目付きでこっちを見ている。
「何人たりとも無断でここに入る奴らは許さねェ、」
そんな言葉と共に腰に刺さっていた刀をスッと抜き去ってハルの方に向けた。
「嘘はついてない!そんな物騒なもん仕舞いなさいよ!ハルと美月に手出したら許さない!」
前に立ちはだかったのはゆき乃だった。
両手を広げて刀の先を首に刺す勢いでそこに立っている。
「ゆき乃、危ないよ!」
美月が腕に捕まって刀を出した奴を睨みつけた。
「好きでここに居るんじゃない!嘘か本当かも見抜けない男になんて殺されてたまるか!ゆき乃刺したらあたしがアンタを殺す!」
美月がゆき乃の腕を引いて前に出ると御館様と呼ばれた着物の男が「殺さないよ。大丈夫、安心して。」そう言った。
信じ難い…けれど今、その言葉を信じる以外には方法はない。
ここはきっと、本当に大正の日本なのであろうと。みんなの服や建物の感じ、そして何より自然に囲まれているこんな所は令和にはもっと田舎に行かなきゃない。京都の寺の中なんて限りがある。けれどここは、見渡す限りの藤の花と、沢山の花や木々が生い茂っている。
こんな場所は、有り得ない。
「あの、どうすれば?」
ハルの声に御館様と呼ばれた人は「うん。とりあえずはしのぶの屋敷に置いてもらえるかな?」しのぶと呼ばれた蝶の髪飾りをつけている小柄な女性がニッコリと微笑んだ。
「承知致しました。」
そして、パチンと指を鳴らすとどこからとも無く黒子の様な全身黒い服の人が数人出てきたんだ。
わけも分からず捕まえられてまた3人の中には恐怖が芽生えた。
カチカチとスマホを振っていると美月が「あ、電源入った!写メ、ゆき乃、ハル、ハイチーズ!」美月の瞬時の掛け声に3人は引きつった顔でカメラに映った…ーーーー