「なによ、離してよ、」
「誰と来たんだよ?言えよ、」
「誰とだっていいでしょ?」
「は?堂々と浮気宣言ですか?」
完全に上から目線でそう言うなっちゃんが今この瞬間めちゃくちゃ憎たらしくて。
「浮気もしたくなるよ、なっちゃんの態度に。」
「…なんだよそれ。何が不満なんだよ?」
ギュッと私を掴む腕に力を込めるなっちゃんはお酒のせいでちょっと顔が赤い。
「不満だよ、なにもかも!私ばっかりなっちゃんが好きで苦しいよ!」
つい感情的に大きな声でそう言う私をちょっとぎょっとしたように見たなっちゃんだけど、ポンっと一つ頭の上に手が乗っかる。
「そんなことねぇよ。」
え?
ここは飲み屋でトイレ近くて、私は勇征待たせててなっちゃんは翔ちゃんを待たせてる。
だけど今この場所は死角になってて…
「なっちゃん?」
「…ごめん。後回しにしてるつもりはないの、これでも。それでもゆき乃にそう思わせてるんだよね、俺。…でももう思わないで、そんな事。」
優しい口調と、優しい温もりにふわりと包まれる。
最高潮、胸がドキンと高鳴った。
「なっちゃん?」
「帰ろ。2人で。今は誰にもゆき乃の事、触らせたくない。」
さっきよりも真っ赤なのはお酒のせいだけじゃないって思ってもいい?
「なっちゃん、大好き。」
私の言葉に嬉しそうにハニカムなっちゃんに、勇征の事が頭の片隅から消えた。