「北ちゃんまでいいのに。ごめんね?」
「俺は飲みたいだけ!早く終わらそ。」
定時過ぎ、ヨッシーと2人で山下さんに頼まれた物を買いに行こうと社内から出ると、入口にこれまた同期の吉野北人がいた。
黒いコートの襟をたててポッケに手を突っ込んでいる北人に駆け寄ると王子様みたいに笑う。
社内でも圧倒的人気な北人は九州男児だから見かけ以上に頑固で。
でも顔が綺麗なせいか王子様キャラに仕立てあげられてニコニコしている裏で、実は男らしい奴だったりする。
まぁお酒は弱いけど。
「明日彼女とこっち来るから買い物しといてっておかしくない?」
言われた物を籠に入れていく私の隣、籠を押してくれるヨッシーがふはって笑う。
「俺なら彼女と一緒に買うけどなぁ。その方がよくない?ね?」
林檎を私の鼻に当ててなぜだか匂いを嗅がせる北人。
北人はなんでも匂いを嗅ぐくせがあって、それを最近は私にも共有するけど。
「いい匂い。それ2つ籠に入れて。」
北人が籠に入れた向こう側、思わずカツンとヒールを鳴らして立ち止まった。
視線の先は憎き八木と、さっきの女。
腕を組んでイチャイチャしてやがる。
「最悪。」
声に出したかは定かじゃないけど、「あ…」ヨッシーの小さな声が北人の視線まで奪っていく。
言わずと知られていたこの想い。
こんなに八木が憎く思えるのはそう、たった一つ…―――――――
八木勇征が好きだから。