そのまま日高くんを避け続けた3日後の事だった。
「げ、土砂降り。」
会社の前で思わず足を止めた。これっていわゆるゲリラ豪雨って奴。バケツをひっくり返したような大雨に傘を持っていながらも一歩踏み出せなくて。
「止みそうもないっすね。」
隣から聞こえた声にドキッと顔を上げた。
スーツのポケットに両手突っ込んで苦笑いの日高くん。
「…日高くん、」
「そんなに嫌でした?俺の気持ち。」
「え?」
「ずーっと会わないように、絡まないように、避けてましたよね?」
…まぁバレるよねさすがに。
「あの、」
「結構傷ついてます、これでも。」
…傷なんて、つく?
頭では日高くんの言葉を全否定しているというのに、私の心臓は高鳴る一方だ。
「でもだから、絶対諦めねぇーって思った。」
ニッて笑顔を見せた日高くんは、私の右手を掴んだ。
「どーせ止まないっすよ、駅まで走ろ!」
「えっ、えっ、」
「ほらっ!」
グイッて繋がれた手を引っ張られて雨の中。2、3歩踏み出したら頭からシャワー浴びたみたいにびしょ濡れで。
せっかくセットされた日高くんの髪もペタンってなっている。
2人で走って走ってお店の軒下にたどり着いた。
「もうっ、強引。」
「強引じゃなきゃ逃げるでしょ?」
日高くんに言われてクスッて笑う。2人とも馬鹿みたいにびしょ濡れで、化粧も何もなくて、それでも私に微笑みかけてくれる日高くんにほんの少し胸の奥が温かくなっていくのを感じたなんて。
「ゆき乃さん、」
キュッて一度離れた手をにぎる日高くん。名前で呼ぶとかずるいよね。
「もう逃げないでくれませんか?」
何も答えられない私の前に回り込んでジッと見つめる。
「俺が後5歳早く生まれてたら、もっとちゃんと見てくれてました?」
28歳の日高くんに言われたら、きっと心はすぐに動いていたかもしれない。だから小さく頷く。
「女の人にとっての5歳がどんだけデカいのか正直分かりません。でも、俺の中での5歳は屁でもないから。俺がいないと生きていけない身体にしてみせます!」
ニカッて笑うとそのまま腕を引き寄せて想像以上に分厚い胸板に私をギュッと閉じ込めたんだ。
――――恋とは、知らずに始まっているものだと。