愛の証明6


「一ノ瀬、日高の文章ちょっと見てやってくれないか?」


上司に言われてドクンと心臓が高鳴った。

ここで断る理由もないし、私は日高くんの下書きを見せて貰った。

本の出版部門にたずさわっている私は印刷前の校正までが仕事で、一字一句のミスも許されない。

新しいコーナーを作ることになり、若手の新人達が来週のプレゼンで勝負することになっている。

それに立候補した日高くんは、死ぬ程気合いが入っているのが目に見えて分かる。

まぁでも若手はそれぐらいの熱量がないとこの世界では続かない。


「日高くん。文章は悪くないと思うの。でももっと強烈なインパクトがないとプレゼンには勝てないわよ。あとここ、誤字ね、」


スラスラとペンで間違いを正す私を見て微笑む日高くん。


「なんかいいっすね、こーいうの。」

「え?」

「初めての共同作業って感じで。」


大きな目で真っ直ぐに見つめるから途端にドキドキと心臓が鳴る。

身体中の血液が顔に集中するのが分かる。

顔が紅くなりそうでスッと目を逸らした。


「仕事中!」

「嬉しいんです、ゆき乃さんと一緒に仕事できるのが。」

「なによそれ。」

「プレゼン、もし俺が勝ったら、デートしてくれませんか?」


思わず振り返った私を、やっぱり真っ直ぐに見ている日高くん。


「そんなの、」

「ダメですか?私情を持ち込む事でよくなる仕事の仕方も、ありませんか?」


そんなの認められない。

昔から仕事に私情を持ち込むなんてご法度だ。

でも、


「ちょっと澤くんと打ち合わせ。」

「ゆき乃さん!」

「絶対勝ちなさいよ。」


立ち上がって後ろ向きで言った。

後ろから「もちろんですっ!」元気な声が聞こえて頬が緩んだなんて。





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