勿論知らないフリで翔太くんとたわいの無い会話をしていた俺の腕を不意にむんずと捕まれた。
「なっちゃん!翔ちゃんも、何してんの?あ、もしかして二人もアナ雪??」
ゆき乃がギュッて俺(の腕)に半分抱きつくように足踏みしていて。肩が揺れるせいでシャンプーなのか香水なのか、ゆき乃の甘い香りが鼻につく。
「そー。けどやっぱ男二人じゃ恥ずかしいから、ゆき乃と勇征待ってたの!」
ニッて俺の隣、翔太くんがナイスパス!ゆき乃はニッコリ微笑んで「あは、じゃあ仕方ないから一緒に見てあげちゃう!勇征もいいよね?」くるりと勇征の方を向くから、ゆき乃の緩いウェーブがかった髪が俺の肩を掠めた。
「さっき言ってくれればよかったのに、なっちゃん!じゃあポップコーン俺にも買って?」
「嫌だよ。ゆき乃先輩のだったら買うけど!」
「え、ほんと!?いいの?なっちゃん!!」
ギュウってゆき乃が抱きつくから内心すげーニヤケながらも真顔で「特別にね。」ほんのり微笑むと「やっぱかっこいい男は違うなぁ!!私なっちゃんに鞍替えしよーかなぁ!」冗談でも倒れそうになるからやめてよ、それ。
「ダーメ。俺の相手はゆき乃しか無理。」
勇征のそーいう素直な所は正直羨ましい。俺が勇征の立場だったら「勝手にしろよ、」ぐらい言うんだろうなーって。心にもない事を言って直ぐに後悔するんだろーなって想像するだけで残念な気持ちになった。
「えー、たまには貸してよ、ゆき乃先輩!」
だから敢えて冗談で、俺今日ノリいいぞ!って思ってもらうよう、ゆき乃の肩に腕をかけて抱き寄せると、想定外だったんだろうゆき乃が本気でぐらりとバランスを崩して俺の鎖骨に突っ込んできた。
ムギュってゆき乃の顔面が俺の制服にびったり。
「ぎゃあ!!ごめんなっちゃんリップついちゃった。」
顔の前で両手を合わせて謝るゆき乃。見ると、ゆき乃のピンク色のリップなのか俺のYシャツについていて。反射的に勇征に視線を送ると苦笑いで目が合う。
「ちょっとタオル濡らしてくるから待ってて、」
俺から離れようとするゆき乃の腕を咄嗟に掴むと困った顔のゆき乃が頬を紅く染めるわけで。
はっ、マジ可愛い!!
頼むよ勇征、今日だけでいいから代わってよ。
なんて言葉が喉の奥まで出てきそうになるなんて。