「なっちゃん、痛いよ。」
遠慮がちなゆき乃の声にハッとして腕を離した。同時に勇征がゆき乃を自分の方に引き寄せる。
「たく。マジでなっちゃんかっこいいから冗談でもダメだから。」
「分かってるよぉ勇征。」
ほんのり涙目のゆき乃が勇征の肩に隠れて見えなくなった。
最悪だ。来なきゃよかった。後なんてつけなきゃよかった。なんて脳内で後悔している俺をわかってか、映画の席は通路側から勇征、ゆき乃、翔太くん、一番奥が俺。
スッと翔太くんが俺を先に入れたんだ。だから勇征も安心したようにゆき乃の隣に座った。俯く俺に翔太くんの優しい手がそっと喝を入れるでもなく、慰める。
「俺、翔太くんになりたい。」
思わず盛れた言葉に「俺は夏喜が羨ましいよ。」なんだろうか、ほんとに。そうやって誰かを癒せるのは翔太くんの魅力だと思う。
とにかくこの場はゆき乃の事を考えないように映画に集中したんだ。
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「なっちゃん号泣!!」
すっかり変な空気もなくなった映画後。真っ赤な目の俺を見て屈託なく笑うゆき乃にホッとしつつ「笑いすぎ、」クシャってゆき乃の髪を撫でた。
「でもよかったよね!あー素敵だった。もう一回見たいよ、勇征!」
「え、また?」
「嫌ならいいよ、なっちゃんと観に行くもん!ね?」
そう言いながらゆき乃が俺の腕にまた巻き付く。まぁ社交辞令だって分かってるから俺も何もほんのり口端を緩める。
「分かった分かった、また観ようね!」
だから勇征もそう言ってゆき乃の手を引いた。
「じゃ、帰ろ。なっちゃん翔太くんまた明日ね!」
そそくさと帰ろうとする勇征だけど、「今日うち泊まる?」そんな耳打ちをゆき乃にしていて、途端に笑顔になって頷くゆき乃はもう勇征のもので。その先に何があるのか容易に想像できた。
「仕方ねぇ、ラーメン行こうぜ!」
やっぱり優しい翔太くんに着いて、勇征とゆき乃を見送った。