あの時から…2


最初はそうやって仕事に対して楽しんで見えた彼らを見るのが楽しいって、単なる興味だけだった。

あの日までは…。




その日は朝から占いがアンラッキーな日で嫌だなぁ…って思っていたんだけれど、お昼にドトールに行っていつものローストビーフサンドと黒糖ラテを頼んで出来上がるのを待っていた。

フードが八木くんで、ドリンクが堀くん。レジは澤本店長の三人で回していた。


「お待たせしました。」


そう言ってニッコリ微笑む八木くんがお盆を差し出してくれてそれを受け取った時だった。

急に後ろから押されてバランスを崩したわたしは、そのまま壁に激突してお盆をバシャンと落としてしまった。

げ、最悪!!!!

そんな事を思ったのは一瞬で。


「ちょっと、何すんだよ!!!」


ちょうど通り側に座っていた人のスーツにラテがかかってしまったんだった。


「ごめんなさい、あの、クリーニング代お支払します…。申し訳ありません。」


ぶつかった女は慌てるように逃げて行っちゃったし、ここはわたしが謝るしかないって…。

だけどすぐに八木くんが出てきてくれて。


「僕の不注意です。申し訳ございませんでした。」


深々と頭を下げてくれた。わたしなんかの為に。

すぐに洗い場にいたんだろう中島くんがモップを持ってきて清掃してくれて。

最後に澤本店長が「こちら無料券ですので、よかったらまたいらしてください…。」って、スーツの男性に渡してその場を抑えてくれたんだ。


「あの、わたしのせいで…」

「違いますよ。こちらの不注意ですので、気にしないでください。ね?」


ニコって笑ってくれて。


「すぐに新しいのお作りしますので、待っててくださいね!」

「…はい、すみません。」


接客業ならみんなこういう風にするのかもしれない。

でもこの日のわたしはどうにも気持ちが上がらなくて、そんな時の出来事だったから余計に沈んでしまって。

帰り際、お盆を置いたわたしに、洗い場にいたのは中島くんじゃなくて八木くんで。


「あのこれ、よかったらどうぞ。」

「え?」

「美味しいんで。僕の賄い一つあげます。」

「え、でも、」

「また来てくれますよね?」


…そんな声でそんな言い方で、そんな顔、ずるくない?


「…勿論。」


その日からわたしのお昼はここ、ドトールにしようって思ったんだった。






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