チャンス到来1


【side 美月】


何故かマンションの隣がトサカの部屋だった。

この会社に来て営業事務をやっていたあたしは、社内で秘書課を作る事になったあの日、トサカに「俺の担当秘書をやって欲しい。」そう言われて嬉しかった。

でも、みんなの臣くんって立ち位置のトサカが嫌で、「プラス、プライベートでも俺の隣に居て欲しい…。」そう続いたトサカの言葉に首を横に振ったんだ。

トサカの事は好きだし大切だけれど、なかなか素直になれないあたしは、自ら幸せを逃してしまったのかもしれない。

最近、えみさんとじろさんカップルがイチャイチャしているのを見て、やっぱり胸がザワつく。

ましてやゆき乃さんまでも恋しちゃってて…ヤバい!乗り遅れてる!!!

これじゃダメだ。そう意気込んであたしはとりあえず家のお風呂を泡で埋めてみた。

猫足のバスタブなんかじゃないけど、念入りに半身浴。

泥パックもして、トリートメントもして、マッサージもして、水分補給もして、やっとこさお風呂から上がると普通にベッドの上でテレビを見ているトサカ。



「なんなの、お前。」

「え?怒ってる?健ちゃんも隆二も捕まんなくて暇だったから会いに来てやったぞ!」


どうしてか?上から目線でそう言われ、イラっとする。


「てか美月、すっごいツルツルじゃん!触らせて?」


ふわりと頬に手を添えるトサカに、この期に及んでキュンとしている自分がいるなんて。


「ちゅーしたくなるなぁ、」

「させないし、ばーか!」

「減るもんじゃねぇのに、たーこ!」


その大きな身体であたしを後ろから抱きしめるトサカは、そのままあたしの部屋に泊まって行った。


ただの一度も触れ合ったことはないけど、いつもギリギリのラインで過ごしているあたしが、ゆき乃さんみたいに本気の恋なんてしちゃダメだよね…。






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