「あの、よかったら交互に使いませんか?」
「え?」
「こちらは構いません。今日混んでますよね?」
「はい。いいんですか?」
「はい!いいよね?澤くん!」
そう言ってショートカットの女が呼んだ先、見た事ある顔…―――――
誰だっけ?
「うおっ!!!!」
吃驚してひっくり返りそうになるあたしを慌ててトサカが抱きとめる。
大変だ、大変だ!
「トサカ、ここでやる!決定!あたしちょっとゆき乃さんに電話するから離せ、」
自分でよろけておいてなんだけど、トサカの温もりから逃げて自販機の横のベンチに座って深呼吸。
ゆき乃さんの八木がいるし!!澤くんって店長だし!!!たぶんだけど、八木は間違いねぇぞ!
【美月?どしたー?】
「ゆき乃さぁん!!今どこ?」
【今?別に何もしてないけど。クッキーとか作ってた。】
「え、え、それ食べたい!いやそーじゃなくて。今ねトサカといつものサル来てんだけど、そこにね、八木がいます!」
【……え?八木くん?】
「そう!しかもコートゆき乃さん取ってもらったの八木のとことバッティングしちゃってて、一緒に使うことになった!だから今すぐ来て!」
【…え、でも、】
電話の向こう、躊躇っているゆき乃さんの声。
この状況で後から来たら怪しまれるかも?って思うよね。そりゃそーだ。
「隆二!隆二誘って一緒に来たらどーですか?隆二ならゆき乃さんの誘い絶対断らないだろうし!」
土曜の夜に好きな女からの誘いを断る男がいるわけない!って。
【うん!行く!美月ありがとっ!隆二誘ってみる!】
ちょっと明るめの声色に変わったゆき乃さん。よかった!
あのドトール内では始まらないものも、一歩外に出てしまえば始まる可能性は無限にあるはずって。
今市隆二くんには申し訳ないけど、やっぱりあたしはゆき乃さんの応援をしたい。