「やっ!」
ゆき乃ちゃんの小さな涙声があたしを包んだ。
手を伸ばしたあたしの腕から離れるようにそう言ったゆき乃ちゃんは、あたしに背を向けて。
それを守るように長谷川くんが背中に腕を回して…
「夏喜さん俺、ゆき乃さん連れて帰ります」
一言そう言った。
「うん…」
なっちゃんの声がすると同時に、ゆき乃ちゃんを抱きかかえるように長谷川くんが立ち上がって泣きじゃくっているゆき乃ちゃんを連れて歩き出した。
分かんないけど…
よく、分かんないけど…
胸が痛くて…気づいたら涙が零れていた…
「どうして…」
完全にあたしのことを拒絶したゆき乃ちゃん。
一体あたしが何をしたんだろうか?
あたしがあんな風にゆき乃ちゃんを泣かせてしまったんだろうか…
「気にしないで…っていうのも無理っすよね」
そっとなっちゃんの右手があたしの髪に触れた。
その手の温もりはとっても温かくて…
余計に涙が溢れてしまった。
長谷川くんの温もりを独占していたゆき乃ちゃんが羨ましいとさえ思ってしまって。
こんな時にまで自分勝手な事思っちゃうあたしっていったい何なんだろうな…――――――
「好きなんすよあいつ、…黎弥さんのこと…」
ポツリとなっちゃんの悲しい声が響いた。
それは、今の今まで感じていた自分の中の胸の痛みとは違うもので、ゆき乃ちゃんが泣いてしまったその理由を知ってしまったが為のゆき乃ちゃんの痛みがあたしに流れ込むようで…
溢れ出る涙を止められなかった。
日高くんが言った「莉子さんのせいじゃねぇー」って意味も同時に分かって。
みんなみんなゆき乃ちゃんの気持ちを知っていたんだって。
「でも黎弥さんが莉子さんを好きな事もちゃんと分かってたんすけど…自分の目の前で告白なんかされて、堪えきれなくなっちゃったんだと…すいません」
絶対なっちゃんが悪いわけでも謝ることでもないし、ゆき乃ちゃんだって悪い訳じゃないのに…あたしの中は罪悪感でいっぱいで。
「恋に痛手はつきものっすよね…許してやって下さいゆき乃のこと」
優しいなっちゃんの声は余計にあたしの涙を誘ったんだ。