恋愛に痛手はつきもの10


翌日。

どんなに辛くても日は昇るわけで、重い腰をあげてあたしは会社に行った。

休むんじゃないかと思っていたゆき乃ちゃんは、始業ベル寸前にフロアに飛び込んできた。

その目は腫れぼったくて、ずっと泣いていたんだな…って思うと又胸が痛かった。

朝礼が終わるとすぐにゆき乃ちゃんがあたしの側に寄ってきた。


「あの莉子さん昨日はごめんなさい。あたし酔っ払っちゃって…心配して来てくださったのに…」


俯き加減でそう謝るゆき乃ちゃん。

まだ真っ赤な目で、今にも泣き出しそうなゆき乃ちゃん。

いつもの元気の欠片もなくなっているゆき乃ちゃん。

あたしの方が「ごめん」なのに。


「まだ二日酔いっぽいなぁ?あまり無理しないようにね!」

「はい。ありがとうございます…」


ペコっと頭を下げて自分のデスクに戻って行った。



なっちゃんはあたしの為を思って教えてくれたに違いない。

本来知っていちゃいけないことを知ってしまったあたしは、ゆき乃ちゃんにかけてあげる言葉が見つからなくて、いつも通りにすることしか浮かばなかった。

表面上のギクシャクはないにしろ、必要以上に話すことのないゆき乃ちゃん達。

静かなフロアに電話のベルとPCを叩く音が鮮明に響いていた。





「ちょっといい?」


ドキっとして振り返ると、やっぱり黎弥くんで。

じつはあの告白以来ちょっとだけ…ほんのちょっとだけ黎弥くんと距離を置いていた。

屋上に出て煙草を吸う黎弥くんの後ろ、棒立ちのあたしを振り返って黎弥くんが笑った。



「何か、ちゃんと言ってなかったな〜って」

「…ごめんなさい」


深く頭を下げるあたしに小さな溜息が聞こえた。


「ゆき乃のこと?」


思いもよらぬ黎弥くんの言葉にバッと顔をあげると、苦笑いであたしを見ている。


「……」

「ゆき乃が俺を好きだから遠慮してるの?」



何とも切ない声が届いた。