翌日。
どんなに辛くても日は昇るわけで、重い腰をあげてあたしは会社に行った。
休むんじゃないかと思っていたゆき乃ちゃんは、始業ベル寸前にフロアに飛び込んできた。
その目は腫れぼったくて、ずっと泣いていたんだな…って思うと又胸が痛かった。
朝礼が終わるとすぐにゆき乃ちゃんがあたしの側に寄ってきた。
「あの莉子さん昨日はごめんなさい。あたし酔っ払っちゃって…心配して来てくださったのに…」
俯き加減でそう謝るゆき乃ちゃん。
まだ真っ赤な目で、今にも泣き出しそうなゆき乃ちゃん。
いつもの元気の欠片もなくなっているゆき乃ちゃん。
あたしの方が「ごめん」なのに。
「まだ二日酔いっぽいなぁ?あまり無理しないようにね!」
「はい。ありがとうございます…」
ペコっと頭を下げて自分のデスクに戻って行った。
なっちゃんはあたしの為を思って教えてくれたに違いない。
本来知っていちゃいけないことを知ってしまったあたしは、ゆき乃ちゃんにかけてあげる言葉が見つからなくて、いつも通りにすることしか浮かばなかった。
表面上のギクシャクはないにしろ、必要以上に話すことのないゆき乃ちゃん達。
静かなフロアに電話のベルとPCを叩く音が鮮明に響いていた。
「ちょっといい?」
ドキっとして振り返ると、やっぱり黎弥くんで。
じつはあの告白以来ちょっとだけ…ほんのちょっとだけ黎弥くんと距離を置いていた。
屋上に出て煙草を吸う黎弥くんの後ろ、棒立ちのあたしを振り返って黎弥くんが笑った。
「何か、ちゃんと言ってなかったな〜って」
「…ごめんなさい」
深く頭を下げるあたしに小さな溜息が聞こえた。
「ゆき乃のこと?」
思いもよらぬ黎弥くんの言葉にバッと顔をあげると、苦笑いであたしを見ている。
「……」
「ゆき乃が俺を好きだから遠慮してるの?」
何とも切ない声が届いた。