「哲也さん」
「あ?」
「今日カラオケ行きませんか?」
「…いいけど二人で?」
「ハイ!二人で」
「…やめとくわ」
「え?なんでですか?俺のこと嫌い…なんですか?」
「嫌いじゃねぇけど、男二人でカラオケなんて行っても面白くねぇだろが!」
そう言われてあたしに視線が移る亜嵐さん。
これから亜嵐さんが口にする言葉なんてもう見え見えだけど、あたしは分からないフリをして首を傾げた。
「梨沙ちゃんも一緒に行く?」
でもその質問は何でかあたしが断った方がいい…みたいな表情にもとれてしまうわけで。
前からずっと思っていたんだけど、亜嵐さんって、亜嵐さんって…
「無理だよね〜急になんて。哲也さん、女の子は色々準備があるんですよ!今日の今日は無理ですって」
あたしまだ何も答えてないんですけど!!
どう返事したらいいかほんの少し迷って黙っていたら、そんな亜嵐さんの言葉。
「あの、あたし…」
「え?なに?無理しないでいいよ、梨沙ちゃん」
「…はぁ」
「亜嵐ちょっとこれ買ってきて?」
なんともいえない雰囲気の中、見かねた哲也さんが亜嵐さんに紙を渡して買物を頼むと、亜嵐さんは喜んでカフェ;はぴねすから出て行った。
典型的なパシリ体質かもしれない…と。
「ごめんね梨沙ちゃん」
静かに煙草に火をつけると哲也さんがちょっと苦笑い気味にそう呟いた。
人気ナンバー1の哲也さんは今の所特定の恋人はいないらしい。
毎日のようにそんな噂が耳に入ってくるけど…実際の所どうなんだろう?
「あいつね、入社一年目の時虐められてたんだよ」
「え…?」
「ほら亜嵐って、ただ可愛いだけだろ!当たり前に女からちやほやされてな…。だから最初の一ヶ月で自分の殻に閉じこもったわけ。今の梨沙ちゃんと昔の自分がよく似てる…ってそう感じるみてぇで。…亜嵐が俺に構うのは、そん時助けたっていうか口だしたのが俺だったから。それからずっとあれよ…本気でウゼェ!いい迷惑だよ!だから早くあいつの心独占しちゃって?いい加減俺に恋愛させて…って」
え?
なに?
なんて?
あたしを見つめる哲也さんはちょっとだけ笑っていて。
その笑いはなんて言うか―――…
「ち、違いますよ!あたし別に亜嵐さんのことなんか、なんとも思ってないです!」