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カタン…


「…ただいま」


うそ!

今の聞いてた…?

哲也さんに頼まれた物をテーブルに置くも、すごく寂しそうな表情を浮かべる亜嵐さん。

それは、あたしに向けられたもののようにも見えて…


だって、亜嵐さん…

哲也さんのことが好きなんじゃないの!?

あたし別に同性愛とかそういうの…本人が好きなら仕方ないし…。


「俺、行くわ」


どうしてそんな顔するの?

あたし如きに。

哲也さんならともかくあたしなんかの言葉にそんな顔…亜嵐さんらしくない。


「待て、亜嵐!」

「待たない!」


あたし達に背を向けて出て行く亜嵐さんに、あたしは一歩も動けない。

「チッ」って、哲也さんの舌打ちが聞こえると同時、ガタっと椅子を鳴らして哲也さんが立ちあがった。

やだ、なんか…


どうして…?

どうして、亜嵐さん?


「これ、どうぞ…」


亜嵐さんを追って哲也さんが出て行ったカフェ;はぴねすには、動揺を隠せないあたしが一人残っていて。

そんなあたしに温かい紅茶を出してくれたのはアルバイトの香澄ちゃん。

哲也さんや、経理の片岡さんとかと仲がいいって聞いたことがある。


「あ…ありがとう」


温かい紅茶を一口飲むと、ほんの少しだけ心が安らいだ気になった。


「あたしなんかが口出していいか分からないんですけど…」


そう言って遠慮がちにあたしを見る香澄ちゃんはとっても可愛い子で。


「亜嵐さん、梨沙さんのことほおっておけない…って言ってました。それって愛を感じますよね」


ニッコリ笑ってくれた香澄ちゃんに、何だか熱い思いが胸を過ぎったんだ。


友情と恋の差は一体どの程度なんだろうか?

友情から恋に変わる瞬間って、どんな感じなんだろうか?

あたしと亜嵐さんは、友情って呼べる程のものではなかったけれど、それでもあたしはそういう思いを持って亜嵐さんと接していた。

あたしなんかの言葉で亜嵐さんを傷つけてしまったかもしれないなんて…

あんな風にあたしの事心配してくれた人なんて、今まで側にいなくて。

たかが後輩一人の為にあんなに優しくしてくれる人になんて、もう絶対に出会えない…

改めて亜嵐さんの優しさっていうか、温かさを知ったんだ。