翌日。
カラン。
カフェ;はぴねすの扉を開けると、いつも亜嵐さんが座っていた席に別の人が座っていた。
そんな事に胸がチクってしつつもあたしはそこに向かって歩いて行く。
「あのぅ…」
「あ、梨沙ちゃんだよね?俺、片岡の直ちゃんで〜っす!宜しくね」
振り返ったその人は、経理課でよく見かける人で。
サラサラの茶髪をフワッと靡かせて、太陽みたいな笑顔をくれた。
首にかかっている社員証には、片岡直人って名前。
実際にちゃんと話したことはなかったけど、亜嵐さんや、哲也さんの口からもよく出ていたその名前にあたしは少しホッとした。
差し出された大きな手を握ると温かくて、
直人さんの笑顔は心が癒されていく気がした。
「亜嵐ちょ〜っと来れなくてね。俺で申し訳ないけど一緒にお昼食べてね?」
そう言って笑う直人さん。
亜嵐さんか哲也さんかどちらだか分からないけど、あたしが一人にならないようにって、こうして他の人をわざわざ呼んでくれたって事があたしには嬉しかったんだ。
でも亜嵐さんがあたしの前に姿を現してくれないって事実は事実であって。
「どうかした?」
顔を覗き込まれてドキっとしながら背もたれに寄りかかったあたし。
直人さんって何ていうか…人より距離が近いなぁ…
なんてぼんやり思いながらも「いえ」って答える。
「彼氏のこと?直ちゃんに言って、言って?」
…彼氏だなんてそんな大それた関係じゃないって思ってるけど、今この場では否定したくないって思いがどうしてかあたしの中にはあって…
それはたった一日会わなかっただけなのに、あたしは朝からずっと、
ううううん!昨日からずっと、亜嵐さんの事だけを考えていた。
「…直人さんは、好きな人いますか?」
「うん、いるよ!」
いとも簡単に何の恥じらいもなく答えてくれる直人さん。
その瞳に迷いはなくて、すっきりとしていて…
「人を好きになるって…どんな感情ですか?」
直人さんなら答えをくれそうな気がしたんだ。
今のあたしは、何にでも縋りたい気分で…
「え?どんなかな…。俺は“守ってやりたい”とか“側にいてやりたい”とか“笑ってて欲しい”とか“幸せであって欲しい”とか…そんな感情なんじゃないかなって思う」