I



誰だってスタートラインは一緒でしょ!

そうゆき乃先輩は笑って。

何でかあたしはちょっと泣きそうになってしまった。

人付き合いが苦手だからって学生の時は色んな事から逃げてきたけど、社会人にはそれは当たり前に通じなくて…

いつまでも一人でいるあたしじゃダメなんだって思った。

でもそんな簡単に打ち解けられなくて、そんな弱いあたしに気付いた亜嵐さんが王子様みたいにあたしを助けてくれた…。


亜嵐さんが連れてくる周りの人達はみんなあたしなんかに優しくしてくれて。

そんな些細な事が嬉しくって

本気で泣きそうなあたしは半ばごまかすみたいに俯いた。


…―――――のに…




「え、梨沙ちゃん?どうした?」


そんなあたしにどこまでも優しいゆき乃先輩は、物凄い近くであたしを覗き込んできて…

それは直人さんと同じ距離感で…。


「何でもないです」


蚊の鳴くような小さな声でそう言うのが精一杯。

声を出したらバレちゃいそうだから。

でもコーヒーを持ってるあたしの手は震えているんだ。


「うそあたしのせい?」


ちょっとだけ困ったゆき乃先輩の声に顔を上げたあたしの視界には、ゆき乃先輩のすぐ後ろここには絶対いないはずの亜嵐さんの姿が入り込んだ。

バタバタ走ってきた亜嵐さんを見た瞬間に、あたしの中での亜嵐さんへの想いが溢れて…涙がポロッと零れてしまった。


「なな、なんで?どうしたの?なんで泣いてるのっ?!」


困惑した亜嵐さんの声があたしに届いた。


「違うっ…―――――ごめんなさい…嬉しくて…」

「えっ?」

「亜嵐さんも、哲也さんも、香澄ちゃんも、直人さんも、ゆき乃先輩も…こんなあたしなんかに優しくしてくれて…」


ズズズって鼻を啜りながらあたしは自分の気持ちを正直に話した。

人見知りで自分から誰にも話しかけられなかった事。

そんな自分を変えたい!と思っていた事。

亜嵐さんが気遣ってくれた時の嬉しさ…

亜嵐さんの周りの人達の暖かさ…


「少しでも亜嵐さんのお役に立ちたくて…唯一あたしに気付いてくれたのが亜嵐さんだったから…」


ポンッ…

あたしの頭に優しく亜嵐さんの手が触れた。

そのまま肩を引き寄せられてどうしてか?あたしは亜嵐さんに抱きしめられてしまった。