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「充分通じたよ梨沙ちゃんの気持ち。俺なんかの事そんな風に想ってくれてありがとう。勝手な思い込みだったんだけど、俺も最初は梨沙ちゃんみたいに空回りばっかしててね。一ヶ月もたたないうちに虐めにあったの。マジでこんなクソ会社辞めてやる!って思ったんだけど…哲也さんが¨幼稚な事してんじゃねぇぞ不細工共!亜嵐に文句言う前に営業の一つでも取ってこいよ¨…って助けてくれて」


哲也さんの真似をしながらそう言う。

思わず想像できたその画にあたしはほんの少し頬を緩めた。


「見ての通り哲也さんは仕事が出来る人だから先輩らも何も言い返せなくてね」


そう言ってあたしを少し離した亜嵐さんはあたしの髪の毛先をクルクルを指でもてあそんでいるよう。

それからゆっくりとあたしの頬に手をかけて零れた涙を拭ってくれた。

でも又すぐに抱きしめられる。


「どーしてもほおっておけないんだよ俺、梨沙ちゃんのこと…やっぱ好きなのかなぁ…梨沙ちゃんのこと」


驚くほどあっさりとそう言う。

そこには恥じらいも何もなくて…

亜嵐さんてばこんな時まで天然なの?ってちょっと可笑しくなる。


「哲也さんに¨早く告れ¨って言われてね、ずっと考えてた…って俺、別に哲也さんに言われたから告った訳じゃないよ?」


又あたしを剥がして顔を覗き込まれる。

あたしは恥ずかしくて死にそうなくらいでどこを見ていいかも分からない。

亜嵐さんのその大きな瞳に小さなあたしが映っている。

こんな緊急事態であたしが答える言葉なんか当たり前に見つけられなくて。

言葉がでてこないあたしに亜嵐さんのちょっぴり意地悪な質問が飛んできた。


「でも梨沙ちゃんは俺の事なんか好きじゃないっしょ?」


そうあたしを覗き込む亜嵐さんの顔は不安げなのに甘い。


「ショックだった…」


亜嵐さんの言うそれは昨日のあたしの言葉の事を意味していた。

昨日のその言葉を今日の今、あたしはしっかりと後悔している。

後悔の意味ももうしっかりと分かっている。

確信を迫る亜嵐さんに今度はあたしがきちんと気持ちを伝えるのが今のあたしに必要な事。

それがあたしの人生を大きく左右するんだ。

自分の気持ちなんて言葉にしなきゃ相手には伝わるものじゃない。

そういう大切な事教えてくれたのは誰でもない亜嵐さんだから…