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「お疲れ―――っす」


定時のチャイムが鳴るとそんな声が飛び交うフロア。

残業weekも終わって今は定時で上がれる事も多い。

そんで今日は奈々ちゃんの歓迎会だった。

経理課の俺らと、ゆき乃の親友だからってゆき乃の仲良しさん達のお馴染みのメンバーが顔を揃えた。


「奈々有難うねマジで」


馴れ馴れしく奈々ちゃんに話しかけてんのはゆき乃の良平さん。

どうにもあの日以降、俺は良平さんを避けていた。

やっぱり俺だけ知らなかったって事実は正直悲しかったし、忘れられていたって事も俺からしたらあり得ないし。

そんな子供みたいな事を、それでも良平さんに分かって貰いたくて。


奈々ちゃんの隣に座って話しをする良平さんはもう、ゆき乃の旦那ってオーラ満載。

前ならそんな良平さんの態度にさえ苛ついてしまっていたかな…って思う俺は、胸中穏やかだった。

こんなに冷静にあの二人を見れたのはいつぶりだろうか?

そんな遠い昔の事にフッと笑いが起こった。

ただ分かっているのは、それが奈々ちゃんのお陰だということ。


「直人気持ち悪い、一人で笑ってたら」

「え?なんでよ?」


俺の言葉に手を止めることのない啓司さんは、目の前にある料理皿をどんどん空にしていく。


「哲也と仲直りしたの?」

「…まだだけど、なんで知ってんの?」

「そんなの見てたら分かる…っていうか、哲也とこの前飲んだ時に超言ってたから」


ははって笑いながらサラって言ってくれる啓司さん。

ビールジョッキを持ったままガツガツとモツ煮込みを食ってるその隣には、もう退職した莉子さんが久々に顔を出していた。

現在妊娠6ヶ月。

元々小柄な人だからまだお腹も目立たないけど啓司さんが常に幸せそうだから結婚生活は順調なんだって思う。

良平さんのこの人への想いがゆき乃を苦しめた事もあったけど、それがあってこその今のゆき乃の幸せなんだから、莉子さん達には幸せでいて貰わなきゃ困る。

まぁそんな不安は今の所無さそうで安心だけど。


「直ちゃん寂しいんじゃない?」


啓司さんの横から顔を出してそう言う莉子さんに、俺は相変わらずの苦笑いしかできない訳で。

絶対に俺の気持ちを知っているんだろう人達に嘘は通用しない。