「直ちゃんあたしね、ゆき乃ちゃんが幸せになってくれるのすごく嬉しいけど…直ちゃんだって幸せになる権利があるんだからね?もうゆき乃ちゃんから離れて自分の幸せ探してもいいんじゃないのかな?」
「そうだよ直人」
莉子さんの言葉に啓司さんが便乗するようにそう言った。
ほんわかした二人の空気に俺の心も安らいでいく。
「俺てっちゃんと香澄ちゃんに謝らないとダメだ。それからだな、うん」
哲也さんとのやり取りまでは知らないのか、莉子さんは少しキョトンとしていたけど啓司さんは柔らかい笑みを浮かべながら頷いてくれた。
そんな哲也さん達はまだここには来ていないらしい。
「啓司さんはいいな、莉子さんに出会えて」
「直人だっているって、俺にとっての莉子が。…ゆき乃じゃない事は確かだけどね」
「残念だなそれは」
「残念じゃないよ?ゆき乃より好きになるんだから…いいことでしょ」
どこまでも啓司さんの声は優しくて俺は泣きそうになってしまった。
やっと少し理解できるようになってきた俺の脳内。
ゆき乃を諦めないといけないって事実をようやく受け入れる準備をしはじめた俺の脳内。
「まぁでも何気にもう始まってたりして…直人のラブ〜」
胸の前でハートを作って啓司さんが笑った。
この笑いは明らかに何かを知っている笑いで…
言葉にするのを我慢しているようにも見えて…
まさかの篤志さんか?
「篤志さんに何か聞いた?」
思わず出てしまった言葉に啓司さんはますますニンマリするも首を横に振るだけ。
「篤志さんに聞いたら何か分かるって、アホだな直人」
そう莉子さんに告げ口しやがった。
「後で聞きに行こうか?」なんて言って笑う莉子さんに、俺は苦笑いを返す。
まんまとハメられたって今更気づく俺って…。
小さく溜息をつくも俺の視線は良平さんの隣で嬉しそうにしているゆき乃に注がれている…。
「未練たらたら?」
気づいたら“今日の主役”ってタスキを無理やり腕にかけられた感満載の奈々ちゃんが笑顔で俺を覗き込んでいる。
「…奈々ちゃん、なんで?」