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前に一度会った時になんて当たり前に俺の気持ちを奈々ちゃんに言う訳もなくそれ以来の再会だったのに、何だか全部お見通しって感じの奈々ちゃんの言葉に内心ドキドキしつつも、気持ちがバレてる分少し楽に話せるのかも…なんて思う気持ちもあって。

苦笑いで奈々ちゃんに視線を送るとニッコリ俺に微笑み返してくれる。


「ん〜ゆき乃の話聞いてて直ちゃんの行動とか言葉とかに愛情を感じたし、ここにきてハッキリ分かったかな…直ちゃんがゆき乃を見ていること」

「たはは…完全にお手上げじゃん俺。…マジでもう気持ち切り替えなきゃダメだって分かってんだよ?…頭ん中では。それがうまくいかない事の方が多いわけで…情けないよなこんな男…」


膝に置いた手が恥ずかしげもなく少し震えている。

こんな弱い男、そらゆき乃も好きになってはくれんよな。

ゆき乃の応援しながらも、心の中ではゆき乃の恋が敗れたらいい…なんて思っていたなんてそれこそマジで最低だし。

そこにつけこんでゆき乃を自分のものにしたいだなんて…


「直ちゃん、恋愛なんて綺麗なものばっかじゃないよ」


奈々ちゃんの手が俺の手にそっと重なった。

ずっと誰かに触れて貰いたいって願っていた俺の手を強く握り締める奈々ちゃんは少しだけ顔を赤くする。

又、あの胸の高鳴りが始まる…―――


「そうだね」

「だからあたし、直ちゃんの気持ち分かる」


それは俺にとっての希望の言葉だった。

と、同時に始まる新しい恋の予感。

そうきっとゆき乃が連れてきてくれたんだって。

いつまでたっても前に進めない俺の為に…





ゆき乃の引継ぎ期間は一ヶ月悠々あって、奈々ちゃんも二週間を過ぎるとほぼ一人で仕事が出来るようになっていた。

だからゆき乃も色んな部署に挨拶周りをしていた。

特別俺と絡むなんてこともほとんどなく、それを少し寂しく思いながらも、俺は奈々ちゃんへの想いを一日一日募らせていった。


「お昼一緒行こ?」


PCに向かう奈々ちゃんの肩をポンっと叩くと振り返って俺に笑顔を向ける奈々ちゃん。


「うん嬉しい!」


ヘヘって舌を出してそう言う彼女は、俺が言うのもなんだけどめちゃくちゃ可愛い。

ゆき乃に似てちょっとドジな所とかすげぇ可愛い。

見てて目が離せないし、俺が守ってやりたいなんていっちょ前に思っていたりもする。