「言わないの?その人に好きだって」
「い、言えないよ…だってその人もきっと他に好きな人いるもん」
たぶんだけど…
たぶんだけど…
長谷川くんは、黎弥くんを好きなゆき乃ちゃんのことを、好きだって思う。
好きな子だから、ああやって助けたんだって思った。
ゆき乃ちゃんもそうだけど、長谷川くんだってそういう立場にいて、きっと辛い想いしているんだってそう思うとあたしまで悲しくてたまらない。
このまま何も言わない方がいいんだ。
「莉子には幸せになって貰いたいな〜あたし。勿論ゆき乃ちゃんにもだけど、誰だって人を好きになったら痛手はかかせないと思うな。それ乗り越えてこその幸せがあるんだよ!頑張りなよ、莉子…好きなんでしょう?」
なっちゃんがくれた言葉と全く同じ言葉をくれた美桜ちゃん。
でもそれはあたしにとっての受け方が違くて…
やっぱり胸が熱くなったんだ。
あたしもいつか美桜ちゃんみたいに誰かの役に立つようなこと言えたらいいな。
そんなこと思いながらも一週間、二週間と過ぎ去っていて。
又、理由なしの飲み会が開催された。
残念なことに役者は十二分に揃っていて、飲み屋内は一時間が過ぎるとヒートアップしていく。
あの日からゆき乃ちゃんの笑顔は久しく見ていなくて、今日も来てはいるものの、あたし達から少し離れた場所に座っていた。
側にはやっぱり長谷川くんとなっちゃんがいて。
いつのも如く酔っ払い度の増した黎弥くん達のテーブルから又歓声なる拍手があがる。
それはまるであの日と同じで、ビールジョッキを一気飲みした黎弥くんがジョッキを置いてあたしの前まで歩いて来た。
え、ちょ…
条件反射の様に視線をゆき乃ちゃんへと飛ばすと、吃驚した顔でこっちを見ていてその瞳はもう涙で潤んで見える。
やだ、黎弥くん!
「どーいうつも…」
「すんません俺、あんな告白しといて…他に好きな奴出来ました!!」
「え…」
吃驚してひっくり返りそうなあたしの言葉を聞かずに、クルっと振り返った黎弥くんは、そのままズカズカと向かいのテーブルに歩いて行く。
うそ、うそ、そんな…又ゆき乃ちゃんのこと悲しませるなんて酷い!!
多少の怒りを込めてあたしは立ち上がって黎弥くんの後を追った。