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それからあっという間に日は過ぎて、ゆき乃のいるホテル-Happiness-は今日が最終日となった。


良平さんの上海研修は、敬浩くんやら、篤志さんやらの掛け合いがあったものの、それでも駄目で、最終的に篤志さんの恋人の汐莉さんが一言言ったらあっけなく別部署の人になったっていうオチだった。

さすがはスーパー経理だって、ゆき乃もめちゃくちゃ喜んでいた。

ケンチさんもてっちゃんも相当心配してたから、みんな嬉しそうだった。


「直人さんなんかあったんすか?」


…今更ながら、亜嵐が元気のない俺に気づいたらしくそう声をかけてきた。

とりあえず苦笑いで亜嵐を見ると、後ろにいた彼女の梨沙ちゃんが遠慮がちに声をかけてきた。


「あの…寂しいですよね、ゆき乃先輩…」


なんだか俺よりも梨沙ちゃんが泣いちゃいそうで。


「あたし、直人さんには勿論ですけど、ゆき乃先輩にはすごくよくして頂いたので、こんなあたしでもすごい寂しいのに…」

「はは、梨沙ちゃんは優しいね、有難う」

「いえ」

「でも直人さんも奈々さんといい感じなんでしょ!?」


亜嵐の目にはそう映ってるんだ。

はたから見たら?そう見えるものなんだろうか?

そんな亜嵐に対して、俺は結局曖昧な笑顔しか飛ばすことができなかった。


目の前ではゆき乃のお別れセレモニーが盛大に執り行われていて、俺は一番離れた場所からそっと見ていた。

見守っていたなんて大それた事は言えないけど、そうするのが一番だって。

俺がゆき乃に出来る事なんてもう、何一つ残ってないんだと。


「はぁ〜…」


膝を抱えて顔を伏せていても、みんなの楽しそうな声は充分に聞こえてくる。


あの日、良平さんが莉子さんに告白した時、目も耳も塞いでいたゆき乃の気持ちがほんの少し分かった。

ただ目の前の現実から逃げ出したいって気持ち…

こんなに辛かったんだな、ゆき乃…。


「なにしてんだ、お前」


突然聞こえた声に顔を上げるとちょっと怒った顔の良平さん。

煙草片手に俺の隣に座り込んで視線を向ける。