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「合わす顔がありません」


そう言う俺の頭にガッツリその右手が落ちてくる。


「アホ言うな、直人!」

「けど俺、ゆき乃の気持ち無視して、無理やり…キスしたんすよ?」


膝を抱えなおして、そこに顔を埋める俺はどっから見ても負け犬。


「まぁ、そこはすげぇ八つ裂きにしてやりてぇくらい腹がたったわ、お前。…けどそこじゃねぇだろが。ゆき乃の事はいい、俺がどうにでもできるから!それよりお前、奈々と…どうなってんだよ?」

「え?」


まさかの良平さんの口から奈々ちゃんの名前が出てくるなんて思ってもみなかった。

ゆき乃のことをどうこう言うのなら分かるけど…。

いや、ゆき乃から全部聞いてるってことか。


「自暴自棄なのは分かるけど、奈々にまでいらねぇ事しただろお前」


良平さんの溜息と同時に煙草の煙が漂ってきて少し目が痛い。


「筒抜けっすね」


自嘲的笑いを零すと「笑い事じゃねぇぞ!」って叩かれた。


「ゆき乃と奈々どっちつかずは止めてくれ。つってもゆき乃は俺のだから渡すつもりも予定もないけど。奈々はゆき乃の親友だし…その気がないならちゃんとそう言えよ」

「…すいません。でも俺…マジで奈々ちゃんの存在でかくて、奈々ちゃんいてくれたからゆき乃と良平さんの事を冷静に見れたりして…それが分かったら毎日奈々ちゃんに逢いたくて…」

「そんなこと、今俺に言うな。本人にちゃんと言えっつーの…男だろ」

「…――はい」

「おう、じゃあな」


ニカって笑うと良平さんは立ち上がって盛り上がっているゆき乃達のいる方へと歩いて行った。



“無理やりキス”二発目。

あの日、飲みに行こうって誘ってくれた奈々ちゃんの優しさに甘えて俺は、帰り際奈々ちゃんの腕を引き寄せて強引にキスをした。

抵抗すら見せなかったものの、唇を離すと奈々ちゃんは悲しそうな顔で俯いて。


「結局あたし、ゆき乃の代わりにしかなれないんだね」


そう呟いたんだ。

もう何してんだろとか、最低だとか…思うことはいっぱいあったのに、俺は否定も弁解も出来ずに、ただ奈々ちゃんを泣かせただけだった。