ゆき乃の事は本気で好きだった。
大好きだったし、愛してたし…
でも、それでも無理なことは無理で。
そんな誰も入り込めない俺の心に、唯一奈々ちゃんだけはドアをノックして開けてくれた。
それなのにもう、俺には奈々ちゃんの側にいる資格なんてないんだろうな〜。
「呼ばれてないけどジャジャジャジャーン!!」
音楽とか歓声とか何かやたら騒がしくて、俺はいきなり目の前に現れたゆき乃のドアップに反転した。
「プ、転がってやんの」
「な…」
「話いい?」
「うん」
まさかゆき乃の方から来てくれるなんて思ってもみなくて、俺は良平さんをチラっと見たら一瞬だけ目が合った。
結局良平さんを含めた俺の周りにいるみんなは友達思いなんだと。
「この前はごめん!!」
座ったまま俺はとにかくあのキスを謝りたくて深く頭を下げた。
「気にしてないって言ったら嘘になるけど、直ちゃんの気持ちに気づいてないフリしてたあたしもいけなかったのかなって」
そうやって笑顔をくれるゆき乃は、やっぱり俺が好きになったゆき乃だと思った。
良平さんがどれだけ莉子さんを好きだと言っても、ゆき乃は絶対に自分の気持ちを誤魔化したりせずに良平さんだけを見続けていた。
だから莉子さんにフラれた時、良平さんの心にすぐにゆき乃が入っていた…
って、いつか良平さんが俺に言ったことを思い出した。
なんでゆき乃を好きな俺にそんな事を言うんだろう?って思ったけど、良平さんなりに俺に気持ちぶつけてくれたのかもしれないって今なら分かる。
ゆき乃の真っ直ぐな気持ちに、落ちない人間なんていやしない。
ゆき乃に限らず、真っ直ぐな気持ちが伝わらない人間なんていやしないんだ。
俺はいつもいつも自分の願望だけでゆき乃を思っていたのかもしれない。
最初から真っ直ぐにゆき乃に気持ちを伝えたら、奈々ちゃんを中途半端に傷つけることなんてせずに、ゆき乃を吹っ切って真っ新で奈々ちゃんを好きだと言えたんじゃないかって。
そんな風に後悔してしまうものの…