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「では皆さん揃った所で、ただ今より我が社の花嫁ゆき乃さんによる、ブーケトスを行いたいと思います!ささ、独身女性の方、お集まり下さい!」


ゆき乃の送別会は、良平さんとの結婚祝いも兼ねた盛大なもので、司会を務める営業のマツさんがそう言うとワーって歓声があがる。

ドドドドドド…って独身女性が集まってきて…

それなのにゆき乃は俺のこともその輪の中に置いて行ってしまう。

めっちゃ居心地が悪いのに、ゆき乃がここに俺を置いたことに少なからず意味があるような気がして俺は歓声にまみれてその輪の中に留まった。


「え、なんで男もいるの?」


なんて聞こえてきた声はあえて無視して、というか吹き消されたのは台の上のゆき乃が「せーの」って掛け声と共に丸く形どられたブーケをフワっと投げた瞬間だった。

綺麗に円を描いたブーケはスチャ…っと女よりは背の高い俺の胸元に吸い込まれるかのように落ちてきた。


「え、ちょっと…」


さすがの俺もこれは吃驚するわけで…

目が泳いでキョロキョロしてしまう。


「おーっとこれは経理課の直人くんですね!どうですか、ブーケを勝ち取った気分は?」


マツさんがマイクを向けるも、どうって…?


「いやぁ…どうしていいか分からないです」


頭を掻いてそう言うとニヤってマツさんが笑った。

その不敵な笑みに何でか違和感を覚えた。


「では今日は特別な日なので、直人くんにも一世一代の大告白をして貰いましょうかねぇ、皆さん!」


パチパチパチパチ…

良平さんが莉子さんに告白した時のような、割れんばかりの拍手が沸きあがった。


「直人さん花嫁のブーケには古い言い伝えがありまして、幸せを運んでくるっていう、幸せ連鎖ですねそうです!この幸せを繋げていくには…あなたが幸せにしてあげたい人にこのブーケと想いを伝えてみませんか?」


司会慣れしているとはいえ、マツさんの言葉をすんなり受け入れる事ができなくて。


「ま、じつはこれは、今日の主役であるゆき乃さんからの希望という事なんですが」


マツさんの言葉にゆき乃を見ると、俺に優しく微笑んでいた。

あぁ、やっぱり俺の幸せはゆき乃から注がれているんだって…思えた。