「じゃあ」
そう言うとゆき乃の後ろ、奈々ちゃんと視線が絡み合った。
キスの日以来、奈々ちゃんは当たり前に俺を避けていた。
ゆっくりと奈々ちゃんに歩を向ける俺に、緊張したように立ち上がる奈々ちゃんはゆき乃から何かを耳打ちされている。
困ったように首を振る奈々ちゃんは、何だかあの日、良平さんの告白を受けた時のゆき乃を見ているみたいに泣き出しそう。
俺は周りの歓声とか全く耳に入ってこなくて…。
「あの直ちゃん…」
躊躇いがちに俺を見上げる奈々ちゃんの髪にそっと触れると、ビクって顔を背けられた。
「ずっと言いたかった言葉があって…“ありがとう”って」
「……」
「確かに俺ゆき乃の事すごく好きだった。でも奈々ちゃんがここ来てから、奈々ちゃんに逢えるのを楽しみにしてる自分がいて…いつも奈々ちゃんのこと探してた。こんな弱い最低な俺なんかのこと、いつでも優しく見守っていてくれて…俺その優しさに甘えてた。だからあんな酷いことして…正直もう奈々ちゃんの側にいる資格ないなってずっと思ってたけど…やっぱ無理…」
「……」
「好きです、ずっと…俺の心、ノックしてくれたあの日から」
「……」
「奈々ちゃんの代わりなんてどこにもいない」
「……」
「俺の側にいてくれませんか?」
「……」
「俺もっと強くなって、これからは俺がずっと奈々ちゃんの事を守るから」
「……」
「俺が、俺の手で…奈々ちゃんを幸せにしたい…です」
フワッ!!
「ありがとぉ…」
俺の腕の中に飛び込んできた奈々ちゃんは、涙でグシャグシャの顔で搾り出すみたいにそう言ってくれた。
それがむっちゃ嬉しくて、俺は力の限り奈々ちゃんを抱きしめた。
「…ずっとこうしたかった」
耳元でそう言うと奈々ちゃんがピクンって動いた。
同時に、やっとみんなの歓声と拍手が俺の耳に入ってきた。
どうせなら?って調子にのって奈々ちゃんを抱き上げたら、準備されていたかのようフラワーシャワーが降ってくる。
「おいっ、それ、俺らのじゃねぇーのかよっ?!」
怒鳴る良平さんを「いいじゃん、幸せ連鎖でしょ」って笑う篤志さん。
よく見ると篤志さんの横にはピッタリと汐莉さんがいて…
薬指に嵌められたお揃いのリングがキラって光って見えた。