そんな事がめっちゃ幸せに思えて、俺と目が合った汐莉さんは笑顔で手を振ってくれた。
それに気づいた篤志さんが、汐莉さんの前に立ちはだかってシッシって手を振った。
あの二人も来年結婚だって言ってたし、本当に幸せ連鎖だな〜って実感したんだ。
「うわぁ!!」
突然ケンチさんが奇妙な声を上げて、何事か?みんなが視線をケンチさんに飛ばすと、携帯を握り締めて目が飛び出そうなくらいに震えている。
「ケンチなんだよ?」
隣のてっちゃんが携帯を覗き込むとケンチさんと同じくらい目をかっぴろげて…
「うお、美桜が産気づいた!ケンチ早く病院行け」
「うんうんうんうん…ゆき乃ごめんねっ!」
ちょっと動揺してるケンチさんが可愛くて、でも立派に父親の顔になっているようにも見えた。
「ケンチしっかり!美桜さんに宜しくね!」
「おおおうっ」
慌しくケンチさんがいなくなるとほんの一瞬シーンとなったものの、みんな又、一笑い起こった。
「あの直ちゃんもうおろして」
腕の中奈々ちゃんの可愛い声が俺の耳をくすぶった。
「お、ごめん」
スッと奈々ちゃんをおろすと顔が真っ赤で、益々離したくないだなんて。
「あのね…あたしの方がずっと直ちゃんのこと好きだったんだよ」
そんな嬉しいお知らせをくれた。
俯く奈々ちゃんはやっぱり恥ずかしそうで、でも俺のスーツの裾をムギュって握り締めている力は強い。
「…ほんと?」
「うん。ゆき乃の話、勿論良平さんの話が一番多かったけど、でもそれと同じくらいに直ちゃんの名前もよく出てきてて…最初はただの好奇心っていうか“この人ゆき乃の事好きなんだろうな〜”ってそんな感じ。でもあの日初めて直ちゃんと会った日からあたし、直ちゃんの事いいなって思い始めて…それで…」
「うん」
「ゆき乃が会社辞めるの聞いてどうしても直ちゃんの側にいきたくて、ゆき乃にお願いしてここに入れて貰ったの。だから直ちゃんが仲良くしてくれて嬉しかった。…けどやっぱり直ちゃんがゆき乃のこと好きな気持ちには敵わないんだって…」
そう言った奈々ちゃんはそっと目を伏せた。
俺が無理やりゆき乃にキスをした時のことを言っているんだって。
何ともいえない罪悪感が又、俺に芽生える。