悲しみ越しの幸せ4


夜になると、新店舗に移転する松本部長の送別会が開催された。

うちの会社はお酒好きの人も多くて、単にみんなでワイワイするのが好きってだけなんだろうけど、それでもあたしにとっての飲み会の場は黎弥とよりいっそう接触できる場として成り立っていた。

この日はいつもお世話になっていたってこともあって、黎弥と北人、竜太くん達三人は松本さんを囲んで離れない。

あたしはそんな黎弥を遠目から眺めているだけでもう幸せで…

ネイルの件もあったし大人しく莉子さん美桜さんと楽しい時を過ごしていた。


それから一時間ほど過ぎた頃だった。

目の前に座っていた莉子さんが突然突拍子もないことを言い出した。


「ゆき乃ちゃんて、彼氏いないの?」


興味津々にそう聞く莉子さんは、あたしの気持ちを分かっているのかちょっと楽しそうで。

思わず黎弥の方をチラって見てしまったあたしはそれを気づかれないように強めの口調で「いません」って言い張った。


「じゃあ好きな人は?」


すかさずそう聞かれて…「いませんって」って言ったら、ニッコリ笑われて。


「うそうそ!今、黎弥くん達の方見たじゃん!!」


あっさり言われた。

バ、バレバレじゃないか!!

“好きな人”と言われて浮かぶのは黎弥ただ一人であって、一時黎弥のとこも忘れてガールズトークをしていたのに、思わぬことで気持ちが溢れそうになってしまう。

今の今まで美桜さんと陸さんのラブラブ話を聞いていたのに…

これじゃあたしの気持ちが美桜さんに、ましてや莉子さんにまでバレてしまう!!


自慢じゃないけど、「黎弥のこと好きなの?」って聞かれて「ノー」と言えないのがあたしの性格で。

勿論自分から好きな人を明かすことなんてしていないけれど…どうにもこうにもあたしは分かりやすいみたいで。

今じゃあたしの回りの男子社員はほとんど知っている。

そんなあたしが今黎弥が好きだと言っている莉子さんから核心を迫られているわけで。

もし莉子さんにあたしの気持ちがバレてしまったら、優しい莉子さんは絶対に黎弥を選ぶことはないって思うんだ。